福祉政策に基づく制度から排除された人々への有効な支援

福祉政策に基づく制度から排除された人々への有効な支援
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ソーシャルアクションの実践モデルという本を出した先生の継続研究.副題が独立型社会福祉士の実践を通してとなっているとおり,独立型社会福祉士が制度の狭間にある人々を支援しているのかをインタビューを元に論じている.
制度から排除されている類型については,

  • 縦割り
  • 申請主義
  • 責任回避
  • サービス利用制限
  • 組織利益優先
  • サービス不足
  • サービスの空白と分類している.

どの類型についてもアルアルと思うような具体例が書かれており,よく整理されている.後半は,独立型社会福祉士としての活動はどのようなものなのかについて簡単に述べられている.分類の詳しさに比べ,内容が薄いが,このことについては継続研究の中でじっくりと述べられているのでこれはこれで良い内容だと思う. どんなことが制度からの排除なのかについて参考になる内容となっている.

地域福祉推進における2つの支援機能 : 個別支援と地域支援に着目して

地域福祉推進における2つの支援機能 : 個別支援と地域支援に着目して
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2017年に発表された新しい論文.
最近の地域共生社会への動向にも目配せしており,現在の地域福祉の取り組みを網羅している.ただ,昨今の地域福祉の展開をなぞるだけでは無く,批判的な考察も加えておりコミュニティソーシャルワーカーを目指す人にとっても参考になる内容となっている.
具体的には,地域にコミュニティソーシャルワーカーが働きかけることで,社会的孤立や貧困が包括的になんでも解決できるような,地域インフレーションな状態にあること.ミクロな問題を住民の主体性や社会資源を有機的に結びつけることで解決しようとすることが使命になっていることなどについて批判を加えている.
筆者は,確かに個別的な支援が地域の中で包括的に解決できることはあるかもしれないが,それが全てでは無い.個別支援の中には現存する他の専門機関に橋渡しをすることで解決することがある.あるいは,地域の課題の解決が個別支援に役立つとも限らず,地域の課題は課題で別立てで考えて行かないことがあることを明らかにしている.
つまり地域支援と個別支援を一体として考えることは問題があり,地域支援の延長線上に個別支援があるわけでも,その逆でも無いということを岡村重夫の地域福祉論を元に指摘している.
本来であれば,地域支援と個別支援をする専門職を分けて連携などをすることがのぞましいが昨今の総合相談やワンストップサービスの中で一体的に捉えがちになっている.地域包括支援センターでも一応は,保健師,社会福祉士,主任ケアマネという役割分担が可能な配置となっているが,ケアプラン作成は三専門職が行い,地域課題についても役割は判然としていない.一方で,そうした縦割りで考えるべきでは無いとする意見もあると思うが,個別支援と地域支援は別立てで一度考えてみるということは必要であるし,それは連携という個々の専門職での連携で捉えることの方が良いのでは無いか.
そんなことを徒然に考えてみたり.やや,読みにくい箇所もあり,論拠を明らかにするあたりは退屈に映るかも知れない.また岡村理論の概要を把握しておかないといけないところもあり,決して優しい内容では無いが,参考文献は示唆に富み,考えさせられる内容となっている.

2017年8月論文リスト

CiNii 論文 - 地域包括ケアとソーシャルワーク 地域密着の実践から

CiNii 論文 - ソーシャルワーカーがソーシャルワーク機能を担ってきた者に向けるべき視座

CiNii 論文 - 専門職養成課程における地域アセスメントの視点の相違

CiNii 論文 - “かかわり” を中心としたソーシャルワーク実践に関する研究 : 精神的困難を抱える思春期児童へのメンタルサポートの事例から

CiNii 論文 - 聴覚障害ソーシャルワークにおけるろう文化視点と文化モデルアプローチの有効性に関する考察

CiNii 論文 - ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察 : 社会福祉制度の動向にみる支援を必要とする人の意向確認のあり方

CiNii 論文 - A.Kadushin 「ソーシャルワークにおけるスーパービジョン」② ―ソーシャルワーク ・ スーパービジョンの定義に向かって―

CiNii 論文 - 認知症高齢者の新たな意味の了解過程に関する事例研究 : 地域住民や専門職と「協働」したソーシャルワーク実践を基盤とするフォーカス・グループ・インタビュー

CiNii 論文 - 高齢者のケアマネジメントに関する文献検討

CiNii 論文 - 宮崎駿論 : 創造への軌跡

CiNii 論文 - 高齢者の地域生活支援における権利擁護実践 : ソーシャルワークとしての視座

CiNii 論文 - ソーシャルワークと社会正義:日本の社会福祉は貧困にどう対峙するのか

CiNii 論文 - 社会福祉教育におけるソーシャル・アクションの位置づけ—博士論文の研究を中心に(研究動向/情報)

CiNii 論文 - 日本におけるソーシャル・アクションの実践モデルの構築― 社会福祉士による実践事例の分析から―

CiNii 論文 - 独立型社会福祉士におけるソーシャル・アクションの実践環境の検討

CiNii 論文 - 河童のリアリティを求めて : 「河童の相撲好き」その底流にあるのはなにか

社会福祉の教育と研究における社会学:ある社会学教員の経験から

社会福祉の教育と研究における社会学:ある社会学教員の経験から

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『社会福祉学の<科学>性』で,日本社会福祉学会の学会賞を受賞した知る人ぞ知る気鋭の学者. 今回は隣接する社会学との対比で,社会福祉学とは何か,そして社会学はどのように社会福祉学に影響を及ぼしたのかを論じている.
といっても,非常にざっくばらんに展開していて,おしゃべりをしているような書き方で読んでいてすんなりと入ってくるが,内容は優しいわけでは無い.最後の方に,社会学は社会福祉学にかなりの影響を与えたが,社会福祉学が社会学にはあまり影響を与えてないことがさらっと書かれているからである.だからこそ,相互交流とか学術的な議論の必要性が提示されているが,実際の話,どうなんでしょうね.
社会学は既存の常識や倫理,社会の有り様を疑うことから出発するが,社会福祉学には倫理などの制限が加わり,ブラックボックスに触れないことがあるなどの違いがある.作法として,社会学は世間からの逸脱をも恐れずに,むしろ逸脱することを目的にするが,社会福祉学は,実践の理論としてどう適用するべきかに注目するなどなるほどと思う. 社会学を社会福祉学が取り入れる場合は,新しい視点で現象をよりよくするために取り入れることなど,確認もこめてなるほどと思う.
読みやすい内容だが,これも養成校の教員向けの話かなぁ.

ソーシャルワークとケアワークの分離に至る過程

ソーシャルワークとケアワークの分離に至る過程

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社会福祉士と介護福祉士の成立過程を詳らかに調べて論じたもの.社会福祉士の必要性については1970年代からすでに論じられていたが,色々あって1987年まで待たないといけなかったこと.あるいは,養成校とか政府,官僚の福祉の捉え方の違いなど,それぞれの時代ごとの審議録などを調べている.
現場サイドとしては,どうでも良いことであるが,ソーシャルワークは社会福祉士かという議論はしっかりとしないといけないような気がする.ただ,文中にもあったが,社会福祉士は当初から相談員,コーディネートやマネジメントを想定されていたこと.また多様な社会ニーズに対応できるだけの広い知識を持った多能工化を目指していたことが分かる.
とするならば,社会福祉士の後にケアマネや障害者福祉では,相談支援員などが出来,相談からマネジメントまで広く行えている今,社会福祉士の存在意義はどこにあるのかという問いは無かった.
ケアマネにしろ相談支援員にしろ,とりあえず量的な確保が優先されていたことを考えると既存の社会福祉士を量的に拡大できなかったのかどうか.介護福祉士の合格率との比較で考えれば,ホントに必要な資格だったのか疑問が残るところである.
とはいえ,すでに20万以上いる社会福祉士の活用法はどうなのか.タダでさえ,受験者数の減少が目立ちはじめているなから,本気に考えてほしいと思う. 内容としては,養成校とかで働いている人にはタメになる内容だが,現場サイドで読むならば考察と結語を読めばだいたいの事が分かる内容となっている.

プロフィール

kuma

Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

自分のサイトもあります。
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