ソーシャルワーク教育におけるスーパービジョンの位置

加護由衣(2007)「ソーシャルワーク教育におけるスーパービジョンの位置」『福祉社会研究』8, 81-95,京都府立大学   


http://ci.nii.ac.jp/naid/110007000733


PDFあり


 京都府立大の大学院博士課程(後期)の論文。本当に才能があって研究が生活の中心を回っている学者以外は、一番研究をして業績を上げなければいけない時期に書かれていると思われる。


 スーパービジョン(以下、SV)という言葉は、久しく施設などのいわゆる現場職員からあまり聴かれなくなったような気がする。あるいは、私が縁が遠くなったためか、養成機関でのSVの議論は一時期に比べてあまり聞こえてこない。原因として、養成機関の定員割れや卒業後の福祉業界への就職率の悪さなども要因の一つだろうし、福祉職の専門性が低賃金や非正規雇用の増大に伴って形骸化しているのではないだろうか。パートやアルバイトにSVなんて欺瞞だし、そんなのを求めていないからね。


 と話がそれてしまったけど、とにかく施設現場や相談業務は知識だけでは仕事にならないし、体力だけでも無理である。福祉は何かの課題を持っている人たちに適切に関わらないといけないから、何が課題で、どのように取り扱い、そして暫定的にでも答えを出すかといった「気づき」や「対処」を身につけないといけない。その時、先輩やら学校の先生などから、様々な知見をもらい、考え、自らの力で対処すること。この知見や対処をどう養うか。これがSVである。


 この論文は学校と現場の乖離から、実践能力を高めることのコンセンサス(共通意識など)が築かれていなく、どのようにするべきか。そしてどのようなことが論じられるべきかを概説している。


 取り立てて目新しい記述はないが、実践とは過程展開そのものであり、実践研究は過程研究に他ならないとする太田義弘の論を軸に、SVの過程を描いているようである。そのため従来のSVは現実の課題を解決することを目的にしていたが、ここではソーシャルワーク実践教育の視点から、スーパーバイジーの能力向上に対するフィードバックを重視することを訴えているようである。端的に経験知の蓄積を重視する。


 ところで現場において経験知の重要性は良く言われることであるが、いまのアカデミックでこの経験知を科学にする手法はあるのだろうか。それを教育の中に組み込むことは果たしてできるのであろうか。そして経験知の伝達とSVはどのようなシステムで行われるべきなのだろうか。昨今、パートやアルバイト的な就労でまかなっている福祉現場が多い。たいていは、簡単な講義と実技で資格を取り、すぐに現場に来る。価値や倫理、歴史などは軽視され、また自らが福祉について学び続ける「方法」も知らない人が多い。そうした人たちに、何かを気づき、対応し、答えを出せと言えるのか。難しいところである。



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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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