ポスト産業社会における社会福祉の対象理解

金子充(2002)「ポスト産業社会における社会福祉の対象理解」『社会福祉学』43(1),33-43,日本社会福祉学会

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008093431

PDFあり:有料

 冒頭に、この論文の主旨がそのまま載せられている。

社会福祉学は、社会福祉の「対象」を理解するための枠組みを提供している。だれが社会福祉の「対象」であるのか、誰が「ニーズ」を持っているのか、あるいはその様な人々が社会に本当に存在するのか。こうした問いを立て、貧困、老齢、病気、障害、差別、抑圧、排除といった生活問題や援助の必要のある人々の存在を理解することは、社会福祉学に課せられた最も重要なミッションであると言える。

 その後、従来の社会福祉学の捉える生活問題とは何かの議論を踏まえた上で、現在の社会状況下に置ける社会福祉学が捉えるべき対象とは何かについて整理している。現在の社会状況の中でも特に、ポスト産業社会~ポスト・フォーディズムやグローバル化に焦点を当て、労働の流動化や新たな労働搾取。あるいは、稼ぎ手のモデルの変化による従来社会福祉が捉えていた規範的家族像の解体などを論じている。

 要するに、今の社会状況下では従来の社会福祉学が捉えていた生活問題には対応できないと言うことである。その時、改めて、社会福祉学の原点を問い直すとすれば、

福祉国家が産業社会の発展を基礎に、社会福祉の制度体系を整備してきたわけであるが、「中略」そこには必ず、根絶すべき対象としての貧困、そして援護・保護すべき対象としての児童と言った「規範」が存在してきた。このことは、対象理解とはあくまでも解釈の問題であり、そして社会福祉学が規範的な学問、ないし研究領域であることを意味している。したがって、対象を捉えることは社会福祉学の原点であり、また問題解決を目指す学としての使命であろう。

 その上で、現在の福祉国家は普遍主義の原理に根ざしているが故に、人々が際や固有性を持っていることに殆ど無関心であること。また社会福祉は男女の性別役割分担と人種差別を前提として成り立っており、さらにその規範を強化する方向で機能してきたことを批判されている。最後に、縦割りではなく、その脱構築を試み批判的社会政策論から多くのことを学べるのではないかと考察している。

 2002年の論文で若干古いかもしれないが、初歩的な意味でのポストフォーディズムやアンダークラスのことなどを学習するには丁度良い内容になっている。その上で、しばしば自分の持ち場の分野だけで事足りてしまっている社会福祉従事者にとって少し大きな視点で社会福祉を考えるきっかけになる論文かと思う。

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