福祉専門職としての援助者の質に関する研究

外崎紅馬(2006)「福祉専門職としての援助者の質に関する研究」『会津大学短期大学部研究年報』63, 29-42


http://ci.nii.ac.jp/naid/110005001539


PDFあり


 福祉系大学の学生と実際に施設で働いている職員の「専門職」像の違いについて調査したもの。その上で、援助者としての必要な要素の根源について考察したものとなっている。調査方法とか集計の仕方は問題なさそうである。t検定や因子分析も丁寧に記述していると思う。


 学生と施設職員の意識の違いとして有意に違うのが、「迷うという気持ちが持てる」というのが印象深い。当然この気持ちは施設職員の方が高く、学生は低い点数となっている。あるいは、受容する気持ちを職員が大切にしており、学生は点数が低い。技術面では、様々な利用者に対応できる技術や専門知識を活用できる技術を学生は意識が高く、職員は、観察力や自分の感情をコントロールできる事に意識が高い。


 因子分析では、学生は第1因子に「基礎的専門知識」が挙げられるが、職員側の第1因子は「人間性」となっている。また学生は、「利用者理解への姿勢」という因子が存在するが、職員側にはなく、そのかわりに、職員側には「利用者主体の援助意識」があり、学生には無い。


 調査結果から、学生は援助者の質について、基礎知識や関連知識などの技術を身につけることを重視し、援助は利用者の立場に立った視点を重要視している。職員側は、実際に提供している援助の内容や、提供するに当たっての心構えや気持ちの持ち方など、援助者の姿勢、価値を重要視している。また援助者として自分自身で考えることの大切さを意識している。言い換えると、学生は援助者の質としての理想を考え、職員は援助者としての質を以下に向上させていくかということに意識が向いていると考えると結論づけている。


 その後、倫理とは何かとか援助者とは何かの理念的な記述が続き、せっかくの調査研究が台無しである。調査研究は調査の結論を述べれば良く、あるいは調査から見えてきた考察にとどめればよいのだが、どうも盛りすぎた様子である。


 とはいえ、学生と施設職員の専門職像のアンケートの比較は面白い。私としては、因子分析でまとめた項目が、同じ因子名であっても、構成が違ったりしているので、その差異までを含めて細かく分析すれば良かったのではないかと思う。例えば、「人間性」の因子では、学生は高い順に、「やさしさ」、「思いやり」、「誠実」であるが、職員側は「思いやり」、「気配りができる」、「心にゆとりが持てる」である。このことから、学生は抽象的なイメージとしての援助者像であるが、職員側は、実践における具体的な態度をイメージしているものと推測されるなど。


 そんなことをイメージしながら、読むと面白いかもしれない。

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