暮らしの中でがんの体験はどのように捉えられているか

土田直子(2010)「 暮らしの中でがんの体験はどのように捉えられているか」『淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要』17, 181-200

http://ci.nii.ac.jp/naid/40017188186

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 副題は、「病後を生きるということ」となっている。

 従来のがん体験者の心理に関する研究の多くは告知直後や終末期という医療の場面におけるものであり、寛解の状態にある人の、生活場面での病の体験に関するものが少ないという視点で、アンケート集計や自由記載から、日々のの生活の中で、がんの体験がどのように経験し、思いを抱いているのかを明らかにしようとしている。筆者自身がガン体験者というのも興味深い内容である。

 中に書かれていることは例えば、ガン発病によって、「生き直す」ことを意識するとか「小さな幸せを感じることができた」など、まずは想像できる範囲のことなので、取り立てて目新しい論理がそこにあるわけではない。しかし、そこにはアンケートの持つ力、多面的な人々の声が反映されていることである。ともすれば、がんと共に生きることの価値基準を獲得するには、1人で価値形成をするのは非常に苦労する。だからガン患者の集いやいろんな集団の中に入り、人々と語り合い、自分を見つめることで、徐々に自分にとってのがんと共に生きることのスタイルを身につけていく。

 その意味で、アンケートから浮かび上がる様々な声を整理し、こんな見方もある。あんな見方もあることが提示されることは、がんと共に生きる人々以外にとっても、非常に視点の幅を広げることになると思う。そして、最後の言葉は、作者自身がガンを体験したことを鑑みると非常に示唆に富む。

 病気体験が、トラウマになるのではなく、人生の中の新たなきっかけとなるような援助、それぞれが個々の事情を踏まえて新しい病後の世界を構築できるような援助が、日常生活を送るがん体験者に対する援助として考えられるべきであろう。従来のような援助を外からの援助とするならば、体験者自身が、自分の力に気づき、豊かな生活ができるような、内からの援助である。人間の持つしなやかさ・健やかさを支えるような内からの援助のためには、体験者自身の傍らに寄り添い、共に新しい世界との関わりを模索する人の存在が意味を持つのではないか、と考えられた。

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