認知症患者の談話分析

山根智恵(2008)「認知症患者の談話分析」『山陽論叢』15, 45-59,山陽学園大学

http://ci.nii.ac.jp/naid/110007479481

PDFあり

 認知症を検査する方法として、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やウェクスラー成人知能検査(WAIS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)が有名である。その一方で、現実のコミュニケーションに近づける検査の模索がされている。これが談話分析というもので、この分析によって患者の言語コミュニケーション面の問題をより的確に捉えようとするものである。すでに1980年代には談話分析は研究され、1990年以降は談話分析の知見を取り入れた検査・評価を開発する動きが見られるとのこと。さらに、こうした日常的なコミュニケーションで分析・検査をすることは、患者の負担の軽減につながるのではないかとされている。

 先行文献や研究方法は適正で、倫理的配慮もしっかりした良い研究論文である。また、分析結果の示し方も良く分かりやすい。

 分析の手法は、1.導入(挨拶など)2.レベルチェック・突き上げ(判定基準のチェックなど)3.ロールプレイ4.終結部に構成されている。レベルは、初級は「はい・いいえ」「好き・嫌い」で応えるもの。中級は相手に事実や情報を求める。上級は説明を求める依頼表現。超上級は仮定的な質問となっている。その後、どのような発言があったのかについては、フィラー(「え~」とか「あ~」とか発話の一部分を埋める音声現象)、相づち・応答詞、接続語・接続表現の多さなどで、その人がどのようにコミュニケーションを取ろうとしたのかを分析している。

 当然ながら軽度の認知症では、フィラーなどの音声現象は多く、コミュニケーションが活発であることが伺えるし、脳血管性の方が情報量としてアルツハイマーよりも多いことが分かっている。また、フィラーの少なさが発話能力の低下と関係するかもしれないという予測結果を示している。

 しかしこうした談話分析はその人の性格とか健常であったときのコミュニケーション能力にもかなり影響されるのではないかと思う。話したがらない人、寡黙な人、その一方で、かなりお話し好きな人など。考えようによっては、HDS-Rなどもその人の元々ある知能や検査内容の理解度によって大きく左右されるし、検査自体に拒否的な場合と協力的な場合ではその結果はある程度左右されることを考えると、談話分析のみならず、検査の持つ不確かさはある程度織り込み済みな上で論じられているんだろうと思う。

 何より高齢者福祉とか心理分析など専門外なだけにこんな方法もあるのかと勉強になった。

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