介護保険制度の課題と改革の方向性

伊藤周平(2010)「介護保険制度の課題と改革の方向性」『総合社会福祉研究』37,19-27


http://www.sosyaken.jp/kiyou.html


伊藤先生(私が好きな先生の1人)は民主党は新自由主義に回帰したと断言した上で、介護保険の様々問題点について筆舌鋭く、かつ分かりやすい論考を行っている。特に、介護の社会化を謳っている介護保険が始まって10年以上が経つのに、孤独死、虐待の増加、認知症グループワークによる人災とも呼ぶべき失火事件。福祉を必要とする障害者・高齢者・子どもをビジネスチャンスとする財界。生活保護受給の高齢者を集めて放置・虐待する施設~ヤミ市場の広がり…もはや介護保険は限界ではないかとする記述は鋭い。


視点は幅広く、介護保険一般に目配せしているが、論点は、介護保険のジレンマ~給付抑制と介護の社会化の構造を中心に論じている。端的に理念として介護の社会化を目指すとなれば、施設や高齢者のサービス利用が増え、また介護労働者の待遇を改善し、人員配置基準を手厚くしていかないといけない。そうなれば、介護保険の給付費は増大し、介護保険料の引き上げにつながる仕組みになる。そうなると介護報酬単価の引き上げは利用者の一割負担の引き上げにもつながり、利用者の負担に跳ね返る。しかし、現在の第一号被保険者の介護保険料は低所得者の高齢者ほど負担が重く、月額1万5000円の年金受給者からの天引きしており(逆進性という)、さらに後期高齢者医療制度の保険料も天引きされている。この二つの保険料負担はもはや限界に来ている。などなど介護保険制度そのものが抑制せざるを得ない現状を描き、まさに介護崩壊を指弾する。2012年の改定で描かれるのは、保険料だけ強制的に徴収され、介護に担い手は圧倒的に不足し、介護療養型医療施設は閉鎖され、公的施設はどこも満杯、仮に施設には入れても必要なサービスは外付けされ、軽土砂も給付から外れるなど、必要なサービスを利用できなくなる。障害者自立支援法が当事者の運動でかくも廃止が宣言されたことを踏まえれば、社会保障運動や研究者の側からも、介護保険法廃止と新法制定の運動を打ち出す時期にきている。



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