統合失調症者の自己決定要因に関する研究

辻陽子(2012)「統合失調症者の自己決定要因に関する研究」『関西福祉科学大学紀要』16,97-116

http://ci.nii.ac.jp/naid/110009488491

PDFあり

 副題は、グループホーム入居者へのインタビュー調査からの一考察 となっている。

 副題の通り、2名の統合失調症の入居者から自己決定とは何かについて半構造でインタビュー調査している。前段でしっかりと自己決定とは何かについてまとめており、自己決定の積み重ねが自身のエンパワメントになっていくことなどを明示している。

 ところで自己決定は、そもそも意思が明確であること、あるいは理性的な判断が出来ることが前提になっており、その意味で精神障害者は疑問符が付くことが多い。しかし、自己決定と言っても、それは「人生の決断」とか「重大決定」の連続であるよりもむしろ、日常で自分がしたいことや、行動の決定を自分自身で選べることにある。とはいえ、人からのアドバイスを聞き入れて自分で選択することも自己決定だし、したくないと思っても、やらざるを得ないと判断することも自己決定である。とするならば、自己決定とは自分自身で全て決めることでは無いとも言える。

 では、自己決定が出来ない状況とは何か。それは自分の意思の介入する余地が無く移行される様々な行動の不自由さであろう。しかし、それすらも完全に可能なのかという反証もあるが…そんなことをグルグル思いながら読んでみた。

 この論文では、逐語録を適時挿入しながら、この二人は自己決定には自己責任を伴わないといけないといった強迫観念に捕らわれている。自分で決めたことは自分で責任を負わないといけない。それは一面ではそうであるかもしれないが、何から何まで背負い込む必要もない日常の意思決定もある。また誰かの手を借りることを決定することも自己決定でもある。最後の方でも述べているが、自己決定をしていることを意識して、積み重ねること。それが自信にもつながり、自己評価を高め、また社会の中で生きていこうと思うようになる。これが重要なことである。つまり、何気なく人々は自己決定をしている。しかし、精神障害者の人々は自身の疾患や社会的評価の中で自己評価が低い。それは自己決定をしていないと思いこんでいる節があり、こうした何気ない自己評価を他者が気付かせてあげること。これがその人自身のエンパワメント担っていくと言える。非常に読みやすくよく練られた論文である。

 それもそのはず、修士論文を加筆修正したモノであるから、少なくても査読が3回は入っているからね。
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