ハリー・ポッターと賢者の石

三浦京子(2012)「ハリー・ポッターと賢者の石」『北海学園大学学園論集』152,213-252

http://ci.nii.ac.jp/naid/120004798245

PDFあり

 副題は、私は誰? 錬金術的解釈 となっている。

 この論文はシンポジウムに使われた原稿であり、それも市民公開講座に使われたものとなっている。

 こうした文学の解釈は、文章の中にある言葉や描写から例えば、作者は何を意図しているのかとか、それは心理学・哲学的にはこう捉えられると論じられる。ハリー・ポッターもまた、他の論文では聖書から解釈やキリスト教と登場人物を重ね合わせたりしている。または、他の作品、例えばナルニア物語との対比などである。

 この論文は表題にあるように、『賢者の石』を題材に、その背後に隠されている象徴や記号に錬金術的な解釈を施している。

 錬金術とは、金ではない物から金を生み出す技法として捉えられているが、究極的には、神とは何か、自己とは何か、あるいは「世界の真実」を追究するといった途方もない思想が根底にある。

 とにかく、例えばグリフィンドールの旗の色と絵柄、あるいはスリリザンの旗の色と描かれている蛇の解釈、11歳になったポッターがなぜ魔法使いと言われ、ホグワーツに行ったのか。なぜホグワーツ行きの列車が9番線4分の3なのか。その数字の意味などを丹念に論じている。とにかくかなり専門的で、錬金術やキリスト教思想に興味がないとぶっ飛んだ内容である。逆に言えば、記号学的な解釈は、え~そこまで読むのとにやにやしてしまう内容である。

 図説もいっぱいあり、ファンタジーとかTRPGが好きな人にはうんちくを語る上でかなり刺激的な内容になっている。ただ、文学がこうした知識を元に書かれていたとは考えにくい。確かに、錬金術的な知識も含みながらポッターを書いたかもしれない。しかし、作者の中にある無意識のイメージやさまざまな物語の原型が幾重にも折り重なって書かれたと考えるべきで、これは一つの解釈の仕方に過ぎないという程度に読むと良いと思う。ただ、こういう解釈もあるのかと面白く読める内容ではある。

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