認知症ケアにおける介護職の確信獲得プロセスの研究

狭間香代子(2007)「認知症ケアにおける介護職の確信獲得プロセスの研究」『關西大學文學論集』57(2),59-77


http://ci.nii.ac.jp/naid/110007152994


PDFあり


 利用者のニーズの尊重に基づいた計画やケアサービス提供が求められて久しい。しかし、認知症の行動や状況は個別性が強く、一般的でマニュアルに即した介護方法では限界である。よって、マニュアル以外のいわゆる個別性について、認知症の行動理解を職員相互間で把握することが重要になる。この研究は、利用者の情報共有化の視点から、どのように情報が共有されるかのプロセスを明らかにしている。


 研究方法はM-GTAを採用した質的研究である。斬新性はM-GTAはどちらかと言えば当事者研究に使われるが、それが介護職員の情報把握のプロセスを明らかにしたことである。社会貢献性は、数多いる介護職員にとって認知症理解は一つのハードルとなっており、その理解の一助になっている。妥当性は研究方法がある一定の手順を踏まえていることから在ると言える。


 確信獲得のプロセスは以下の通り。



  1. 予測不可能な行動と認知症独特の世界観から戸惑いが起こる。その上でマニュアル通りにできない介護にその異質性を改めて認識し、ストレスが発生する。これは不確実性への気づきといえる。


  2. その内在する不確実性の解消は、学び直しを促し、形からの学び~日常業務の他の職員を真似てみたり、工夫したりする。あるいは根拠から学ぼうともする。相談したり、積極的に尋ねることで学習し、これらの学びを通じて獲得された介護方法はシュミレーション化される。そうした学び直しや学習を通じて、引き出し作りが作られる。


  3. 情報収集の手段は二つあり、口頭情報のすりあわせをすることであり、それは文字化の困難さや不可解な行動の認知、工夫したケアの創出になる。もう一つが、文字化情報の集積であり、介護職員が確認できる情報の記録を参照し、蓄積されることでいつでもみられる情報という利便性の元で常に参照される。


  4. 1~3を通じて、フロア全体の共有情報を創出していき、確信の形成が行われていく。この確信は安心できる関係作りによる利用者と職員の関係を土台にしている。それは兼ね合いが分かること。行動の意味が分かること。そして本人にペースなど波長が分かることである。

 最後のまとめに、所属集団のコミュニケーションの質が介護力に影響すること。職場内で経験的に蓄積された介護方法が職員の介護力形成に影響していることと書かれているが、まさにその経験知のプロセスを詳しく、そして分かりやすく書かれた良い内容である。

 特に指摘することが無く、非常に参考になり、勉強させてもらった。



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