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介護保険制度1

 介護保険制度などについて収集した論文は24本。

 大まかに制度成立過程とシステムへの批判的検討、そして特に介護保険制度が施設運営にかかる内容に分けられた。

 成立過程とシステムは論文の中で混在することが多く、システムと施設運営はリンクする。なので、これらを厳密に分けることは困難であった。とりえあず、施設運営と介護保険の影響は2にして、ここでは成立過程とかシステムについての論文を紹介していく。

  1. 鏡諭(2012)「介護保険と高齢者福祉の政策的課題:介護予防政策をめぐって」『淑徳大学研究紀要.総合福祉学部・コミュニティ政策学部』46,1-28
  2. 角能(2008)「ケアサービスにおける官・民・家族の役割分担に関する理論的検討--「公的負担の公平性」を中心に」『東京大学大学院教育学研究科紀要』48,103-114
  3. 清水浩一(2003)「介護保険法の成立過程にみる「隠れた論点」--福祉政策決定過程における情報公開と情報操作」『明治学院論叢』690,129-154
  4. 圷洋一(2003)「介護費用に関する素描:社会保障の財源論から規範的議論へ」『長崎国際大学論叢』3,93-101
  5. 大沢光(2010)「介護保険法改正と指定制度:その行政法学的検討」『青山法学論集』51(3),249-289
  6. 岩本康志・福井唯嗣(2011)「医療・介護保険の費用負担の動向」『京都産業大学論集.社会科学系列』28,159-193
  7. 安宅川佳之(2010)「少子高齢化時代の社会保険制度の展望」『日本福祉大学経済論集』40,1-32
  8. 山田亮一(2009)「高齢者福祉施設と社会福祉の史的発展における一考察」『高田短期大学紀要』27,59-67
  9. 佐藤満(2010)「介護保険法の成立過程」『立命館法學』5,2197-2232 補助
  10. 柏崎洋美(2010)「介護保険料に関する一考察:公費方式導入の可能性」『実践女子大学人間社会学部紀要』6,109-124
  11. 孫珉璟(2012)「施行4年目を迎える韓国介護保険:その現状と課題」『佛教大学大学院紀要.社会福祉学研究科篇』40,19-34
  12. 宣賢奎(2010)「日本・ドイツ・韓国の介護保険制度の比較考察」『共栄大学研究論集』8,1-18

清水PDF無し

 海外との比較では、が韓国の介護保険制度の現状について紹介している。韓国も家族介護の限界などから介護保険は2008年から施行されている。また韓国では一人暮らしの高齢者が多くなり、結婚率の低下や離婚率の上昇など日本と同じような傾向にあることが分かる。またシステムは日本のそれとほぼ同じであるが、現在の利用率が6%くらいで、介護度も3段階であるなどの違いがある。人材確保からサービスの内容まで幅広く紹介しており、海外との比較をしたい方には良い内容となっている。

 または韓国に加えて日本、ドイツも加味して比較している。それぞれの制度の成立過程や背景の違いを比較しており、歴史を知る契機になっている。特にドイツでは20年、日本では6年、韓国はより短い期間で成立したこと等や一覧表があり読みやすい内容である。これを読むと案外、日本はサービスが豊富で手厚い印象を受けた。

 柏崎は特に保険料に焦点を当てて、税方式か社会保険方式にするか、そのメリット・デメリットをドイツ、イギリスの比較のもとで検討されていた。しかし、途中から日本の介護保険料の成り立ちから、徴収方法、減免処置、判例を詳述した内容であった。しかし、判例は結構丁寧に書かれ参考になることが多かった。

 介護保険はこれまで5回改正されており、改正のポイントや史的な考察もある。佐藤は介護保険の成立過程を総体的に描写している。政治家・官僚・各種委員会・審議会等々の議事録や発言などをつぶさに取り上げ、再構成し、言説のぶつかり合いからつぶし合いまで、一つの舞台裏を観るかのような内容で、一種の政治小説にも似たスリリングな内容となっている。内容が二転三転する様やどのような言説で組み上げたのかそうした裏事情も含み非常に面白い内容で、労作である。

 同様に介護保険成立過程での政策的意図せめぎ合いについては、清水が論じてる。介護保険成立後二年ほど経過して書かれた内容であり、現在2013年2月現在では意味合いも違ってくるが、安宅川が政策決定の舞台裏を描いているが、清水は事例などを紹介しながら、在宅福祉は家族介護の補完に過ぎないこと、選択の自由は疑わしいこと、情報操作をしたことなどに論点を絞り、その証拠に審議会や政治家のやりとりを証拠として肉付けした内容となっている。歯切れが良くダイナミックな内容で面白い論文である。

 介護保険に至る高齢者福祉の歴史的概説は山田が行っている。たった8ページ読めば高齢者福祉の成立過程が分かるコンパクトな内容で復習にはよいかと思う。ただ、ネオリベ寄りなので、その辺は鵜呑みにしてもいけないが。

 史的展開として社会保険の状況について安宅川が公的年金、医療保険、介護保険のそれそれを広く扱い描写している。どちらかといえば、2000年以降から2050年までの将来的な内容であり、今後の社会保障がどうなっていくかと言った設計に関わる内容となっている。よく持続可能性のある社会保障という言葉がメディアや清司科学にするが、その内実は実は多岐にわたり容易ならざる問題をはらんでいる。その意味でこの論文はじっくりとそのあたりのことを描いており、読み応えがある。

 同様に医療・介護保険について2050年まで詳細にシミュレーションを岩本らがしている。介護保険の方が公的負担分が多いが故に保険料ののびが深刻化することが明らかになっている。また対策として、積み立て方式を示しており、二重の負担をする世代の負担軽減になることが示されていた。

 制度的な課題などについては、指定制度の変遷を中心に大沢が論じている。そもそも介護保険は民間活用、自由な競争で企業などの参入を歓迎していたが、この論文が書かれていた当時、コムスン問題などで2005年の介護保険改正では、監督権や指定取り消しをめぐる法的規制が為された時期で、指定制度とは何かあるいは監督権とは何かについてじっくりと書かれた内容となっている。コムスン問題とは何か、そして何が変わったのかを知る契機になる論文である。

 改正に関わることとして、は2012年の介護予防など第五期介護保険事業計画の内実について紹介を行っている。すでに第5期がスタートして2年目に突入するわけだけど、実際の介護保険業務に従事している人たちにとっては理念や実際のサービス運用について改めてすることはないかもしれない。しかし、現場はともすれば自分の持ち場にことはよく見えるが、その他はまったくということがあり、その意味で総体的な理解としてはちょうど良いページ数で詳しく分かるという便利ものである。

 介護費用について面白い論考として、の研究がある。介護費用は財政や制度上の変遷で語られることが多いが、この論文では介護費用をより広く論じ、ヒト・モノ・カネあるいは、直接・間接といった多様な視点で論じ、"介護費用"というイメージの解体と再編成をしている。介護費用という一件決まったことであってもそこには様々な言説がせめぎ合い、イデオロギーが対立し、流動的であることが分かる内容である。

 介護保険に限らず家族、民間、行政のケアサービスについて四象限化しながら、が論じている。東大大学院の論文なので非常に精緻にこの関係について論理的に述べられている。理念的ではあるが、一口に福祉といっても、行政、民間、家族の役割は違っていて、その整理に役立つ論述になっている。私としてはこうした役割を把握した上で、当事者がどのような"福祉"を利用、選好するのか。そもそもどうしてそのサービスを選好したのかが大事であろうかと思う。じっくり読むとよく分かる内容となっている。


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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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