介護老人施設で暮らす軽度認知症高齢者の日常での経験

服部紀子・安藤邑恵・中里知広ほか(2011)「介護老人施設で暮らす軽度認知症高齢者の日常での経験」『横浜看護学雑誌』 4(1), 63-70, 横浜市立大学

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008146959

PDFあり

 認知症になった人への質的研究は最近結構盛んに行われている。というのも、認知症とは単なる物忘れ・惚けとは違った、現実世界と自分の関係性の崩壊を意味する疾病であるから、その内面で何が起こっているかを知ることは重要である。なぜなら今後(すでに)高齢者が増大する日本において、この認知症への理解あるいは対処は早急に取り組むべき課題であるからだ。

 この論文は、軽度認知症と診断されている高齢者から聞き取った質的研究。しかも介護保険施設に入所して生活している中で、彼女たちは何を想って生活しているのかを知る良い内容である。一般に、入所とは閉鎖的だとか自由がないとか、尊厳が守られていないと見なされる。また認知症は、その日のことも忘れるから聞き取ることは無理だと思う。あるいは、認知症がしばしば起こす「問題行動」は職員側がしっかりと認知症を理解していないから起こる問題だと言われる。そうした言説は、当事者の実際の声ではなく、外部や職員サイドからの把握でしかない場合が多い。そうした意味で、こうした聞き取り調査から当事者が実際どう思っているかを聴くことは非常に大切であろう。

 内容は本文を読めば分かるように、案外施設に対して肯定的な意見を拾うことが出来ていた。家族に惚けで迷惑をかけてきたので、ここで暮らすと安心だとか、同じ日課の流れでむしろ安定できるとか、動いたり疲れたりしていたからこうした上げ膳据え膳は楽だとか。また職員は家族と違って脅かしたり怒ったりすることがないので良いとか。またはみんなと話し合ったり、同じような年代の人たちと一緒に暮らすことは楽しいとか。一番気を遣っているのは、これ以上お世話になるのは気が引けるので体調だけは気をつけているというのは軽度であるが故の発言だろうと思う。

 いずれにしろ、ケアの質を高めなさいと言われるが、何のためにと言われれば、利用者のためと答えは返ってくる。しかし、当の利用者がどんなことを思っているのか。そうした事実を読めばまた仕事に対しての目的意識がより高まるだろう。入所者達は感謝している。だから良い仕事をすることは大切である。そんなことを確認させてくれる内容であった。

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