ナラティブとエビデンスの関係性をめぐる一考察

奥野雅子(2011)「ナラティブとエビデンスの関係性をめぐる一考察」『安田女子大学紀要』39,69-78

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008103436

PDFあり

 この論文は、医療におけるナラティブとエビデンスの関係について考察されている。社会福祉でもこのエビデンスとかナラティブは使われる。エビデンスは簡単に言って「実証」あるいは「根拠」、ナラティブは「語り」である。

 特にエビデンスは介護分野では使われ、その行為にエビデンスを示しなさい。あるいは、根拠のある介護、あるいは科学的に測定できる介護を目指しましょうと。ちょっと勉強したことのある人なら、EBM(実証に基づく医療)とかEBSW(実証に基づくソーシャルワーク)という略語を知っているかもしれない。

 エビデンスは客観的実証であり、ナラティブは主観的体験(語り)であるから、通常対立概念と考えられている。しかしこの論文には、濃淡はあれどもエビデンスの中にナラティブが、あるいはその逆にあり得ること。また症例をもとに時間的経過の中でエビデンスとして判断することもあればナラティブから判断することもあるなど、連続性や思考が行ったり来たりしていることなどを紹介している。

 考えてみれば当たり前の話で、たとえ量的調査でもそこには研究者の主観が含まれて数字が構築されるものだし、質的研究でも妥当性や手続きをする上で客観性を保持しようとする。また人は、どこかに根拠を持たないとその言動に説得力を持たないが、かといって主観的な判断からは逃れられない。結局、対立と言うよりも、研究でも判断でもこのナラティブとエビデンスは常に内包され、円環されるのである。本当のエビデンスとは初期条件だけであるとする視点は全くその通りと思う。

 短い論文ながら、ナラティブとエビデンスという言葉に興味のある方にはよくまとまった内容で理解が進むかと思う。

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