ダウン症の子どもを持つ母親の「障害をめぐる揺らぎ」のプロセス

関維子(2010)「ダウン症の子どもを持つ母親の「障害をめぐる揺らぎ」のプロセス」『社会福祉』51, 67-87,日本女子大学

http://mcn-www.jwu.ac.jp/sw/backnumber_mokuji.html#51

PDFあり:独自リポジトリ(目次をクリックすれば自動的にダウンロード)

 副題は、障害のある子どもを持つ母親の主観的経験に関する研究 となっている。

 質的研究、M-GTAの技法を使ってとても分かりやすく書かれた内容。M-GTAはちょうど会議録にも似て、時系列でありながらもいくつかの話のまとまりを上手くコーティングするので、ストーリーとして非常に読みやすくなる。

 この手のテーマは、障害を持つ子を出産してから、悲嘆に暮れたり、葛藤したり、闘ったり、そして最後には受容すると言った、障害理解のプロセスを描き出すものが多い。この論文も基底にはそんなところがあるけれど、面白いのは、一直線に、ネガティブ→ポジティブの過程ではなく、ネガティブに思っていることが多いけれど、その反面ポジティブだったり、またポジティブに行動しながらも想いの中にネガティブなものがあったりと、常に「揺れ」ている心情を上手く表現している。またこの論文の独自性は、心臓などの重篤な合併症を持つことになったダウン症の子を持つ母親と内疾患がないダウン症の子どもをもつ母親の心情の違いを考察していること。

 結果だけ言うと、合併症を持つ方は、医療的なハードルを越えるので精一杯になり、命優先のケアに明け暮れていくウチに、ダウン症という障害そのものもプロセスの中で受容するらしい。その一方で、内疾患のない方は障害の受容が先になるが、その分障害と向き合わざるを得ない状況になる。

 母親達の肉声や現実の中で子どもを育てること、そして障害の持つ子どもへの、〈ずれ〉や〈揺らぎ〉がとてもよく表現されている。障害者関係で勤めている方には是非読んでもらいたい内容。一般に、障害を差別してはいけないとか障害の持つ子どももまた元気に生きる権利があるといったありきたりのスローガンに隠されがちな、リアルに育てている母親の声はいろんな事を考えさせてくれる。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kuma

Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

自分のサイトもあります。
kumaの学習ノート

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク