空想のアイドルグループの中で生きる女子中学生への治療的関わり

澤田愛子(1991)「空想のアイドルグループの中で生きる女子中学生への治療的関わり」『北海道大学医療技術短期大学部紀要』4, 13-22

http://ci.nii.ac.jp/naid/120001152478

PDFあり

 副題は、作話の心理的根拠を巡って となっている。

 学校の身体検査結果、軽度の右難聴と診断、その後耳鼻科で心因性難聴と言われ、神経内科に勤めていた論者との関わりの全記録。この難聴は論者と関わったときにはすでに軽減していたが、それ以上に彼女の心の悩みが作話や虚言癖などに顕れていたことからその対応を綴ったもの。

 知的レベルは軽度の精神遅滞レベルだったが、調べていく内に驚くべき想像力と空想力を有していたとのこと。内容は是非読んで欲しいのだけど、簡単に言って、自分の過酷な生活・現実から自分を守るために、空想のアイドルを生み出し、そしていつしか好きなこと自分がアイドルの一員になっていろいろな活躍をすることを臆面もなく治療者である論者に語っている内容である。

 現実の女子学生は孤立して目立たず、家でも愛人がいる母親と微妙な関係の姉とのトラブルが絶えない環境。そんな中自分が唯一それでも生きていこうとしたとき、こうした空想が現実から身を守っていたのである。この論文を読みながら、痛い中学生の妄想と切り捨てるのは簡単だけど、少なからず人は妄想の中で生きる。私もしばらくそうだったし。そして昔見た映画、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思い出す。ビョークが演じるシングルマザーでしかもほぼ全盲に近い弱視の上、貧困にあえぐ女性であった。そんなビョークを支えたのが空想の世界と息子の存在であった。暗い現実と明るい空想の狭間で生きることで、時に人は生き続けることが出来る。そんなことを考えた論文であった。論者のまなざしも暖かく、読んでいてほほえみそうになる内容である。


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