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Y問題の歴史再考:学問基盤による視座の相違に着目して:田中秀和

田中秀和(2019)「Y問題の歴史再考:学問基盤による視座の相違に着目して」『立正社会福祉研究』21(35),1-14


いわゆる医師や家族,本人の同意無く,精神科病院のソーシャルワーカー(以下,PSW)が独断と偏見で精神科病院に入院させたこと.それによる人権侵害を被ったとYさんが裁判闘争をしたことについて,歴史的にあの問題はどうなったのかを改めて考察している.

この論文の主眼は,副題にあるとおり学問基盤によって捉え方が違うこと.その違いを社会福祉学がどう理解したらよいのかを考察している.社会福祉学と比較するのは,主に障害学(社会学)である.何が社会福祉学と障害学で違うのか,私自身,あまり区別無く読んでいるので,ピンとこなかったけれど,社会福祉学は,どちらかと言えば規範科学であり実践科学であるから,このY問題を契機に反省の上,PSWの取るべき行動を規範として明示することを持って前進させることが重要になる.しかし,障害学は当事者の視点で社会への批判や客観的な意味での事実を突きつけることを持って世に問う.だから反省することは大事であるが,それ以上に精神医療の持つ管理性や社会的防衛などをもっと明らかにして対抗する視点を打ち出すべきでは無いかと訴える.

確かに社会福祉学はどちらかと言えば支援者の立場(支援者の目指すべき方向とは…)にあり,当事者の本当のニーズと外れたところにあるかも知れないし,応え切れていないかも知れない.さらに社会学の立場に立てば,社会福祉学は当事者にとって数多ある社会サービスの一つに過ぎない.

そんなことをアレコレと考えさせられる内容となっている.

ちなみにこの論文は,障害学の立場で書かれたY問題の論文を念頭にそれに応答する形で書かれている.その中で入手が可能でよくまとまっている論文を紹介.当時のチラシとか会議録やPSW側の発言などもつぶさに拾いながら,PSWは組織を維持するために本当の意味でのYさんが訴えたかったことを形骸化したことを指弾している.


桐原尚之(2013)「「Y問題」の歴史 : PSWの倫理の糧にされていく過程」『Core Ethics : コア・エシックス』9,71-81,立命館大学大学院先端総合学術研究科


そして何より,1969年に起こったこの問題が今もなお論じられ,そして本質的にあまり変わっていない状況は,たぶん現場にいる人は感じるはずである.そして,その問題は,より巧妙にそして静かに存在し続けていることに気づくはずである.

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Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)→地域包括支援センター→救護施設と20年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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