知的障害児施設に入所する子どもへの動的家族描画法の試み

小西一博(2006)「 知的障害児施設に入所する子どもへの動的家族描画法の試み」『教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 』1, 87-95

http://ci.nii.ac.jp/naid/110005421866
PDFあり



 動的家族描画法(KFD)とはあまり聞き慣れない方法であるが、人物描画法と家族描画法を組み合わせた精神分析法である。家族成員が何をしているところかを書く方法に得られる情報量は人物が方などよりも飛躍的に多くなるとのこと。KFDの解釈は、人物(間)の行動や空間、特徴、位置や距離などによって行われる。例えば、書かれるべき人物像の抹消や省略は他の成員と同一の場面に置きがたいほどの敵意や攻撃や不安などの否定感情を意味するなどである。

 この論文の斬新性は、軽度の知的障害児に適用したレアな試みであること。社会貢献としては、知的障害児施設などの児童福祉施設における心理専門職の必要性を訴えた事による。

 この描画法は、非行や虐待など家族に何らかの困難性がある子どもに有効な方法と言うことで、この論文でも対象者が虐待の疑いがあるとの事由で入所している障害児を取り上げている。また描画ができる程度の能力を有している障害児~軽度を研究範囲にしている。

 事例は4ケース。詳細な分析と描画を載せており、丁寧な論述となっている。

 しかし、いくつかの疑問点もないわけではない。軽度の知的障害者であるが、どの程度の描画能力なのかが明らかではないため、例えば手足の省略→否定的感情という結びつけはどうかと思う。というのも、精神年齢や発達程度によって、軽度の知的障害児であっても見た目や実年齢以下の描画をするものだし、5歳くらいの発達年齢であれば、手足の省略やスタイルの崩れはあり得るからである。

 また虐待があることが研究範囲になっているため仕方がないが、仮説に沿った論述であり、若干誘導的な解釈ではないかと思う箇所も散見された。絵の不得手やその時に想起した一場面のみでは限界があろうかと思う。ひとりにつき何枚かの絵を描き、継続的な中から探るという研究もまた重要な気がする。

 とはいえ、こうした研究はないに等しく、試みとしては非常に興味深い内容であった。


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