会話の中における知的障害者の不利益の提示

堀内浩(2012)「会話の中における知的障害者の不利益の提示」『北星学園大学大学院論集』 3, 69-88

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008915163

PDFあり

 当事者主権や現在の障害学などを参照にしたもの。従来、知的障害に関する研究は先に挙げた領域に対してある一定の距離を保ってあまり論じてこなかった。そのため差別や偏見、あるいは健常者側にある目に見えない支配などをえぐることが少なかった。

 北星学園は北海道でも有名な福祉系大学。また独自な研究スタイルを長年続けており、良質な論文が産出される所でも有名。その意味でも、最新の研究成果が無料で読めるので、興味のある人はこの紀要と『北星論集』をチェックしたらよいかと思う。

 この論文では、健常者と知的障害者が会話をすること。その会話の細部に既に知的障害者であるということを位置づけてしまう作用が働くことを筆者とベーカリーショップで働いている知的障害者との会話の記録から考察されている。要するに会話の叙述(スクリプト)を例示して、その背後にある作用(トランス)を考察したもの。

 通常、このスクリプトを使ったエスノグラフィーを志向する論文は、会話の叙述を多用しながら考察を加えていく形式であるが、この論文はそうした叙述が少なく、逆に説得力の欠ける内容である。仮に、本文に差し込まないとしても、参考資料でスクリプトの一部をまとめておく等を行えばより説得力が増したのではないかと思う。読み手は、どうしてそういう結論に達したのかを会話の中から知りたいのである。

 それはともかくとして、会話の中に知的障害者だからと同定させてしまう作用は確かにある。空気を読まない、すぐに分からないと答える、あるいは答えることが出来ないだろうと会話を打ち切る。イエス・ノーとする。あるいは質問をするのは健常者で、答えるのが障害者側が多いとか。そうした微細な力関係が知的障害者を作り出すこともある。

 脱構築の方策としては、たぶん、遊びなどのフラットな関係作り何じゃないかなぁと思ったり。

 視点としては面白いし、読み応えはあるので、良い論文ではあると思う。

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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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