英米文学における超自然

金井公平(1990)「英米文学における超自然」『明治大学人文科学研究所紀要 別冊』(10), 193-208

http://ci.nii.ac.jp/naid/120004081325

PDFあり

 副題は、現代における恐怖小説の復権:H.P.ラヴクラフトの場合 となっている。

 ゴシック小説の解釈をしたものとは違い、こちらはラヴクラフトの作家生活や日生活までを詳しく書いている。ラヴクラフトはそもそも大衆のため、生活のために書いているのではなく、純粋な自己表現を追求したものであったこと。それでも我慢強くつきあってくれるマニアがいることでよいとするスタンスで小説を書き続けてきた。孤高の表現者であったこと、あるいはそうしたスタンスを保ち続けてきたものとは何か。そうしたスタンスで論考されている。

端的にそれは、ラヴクラフトが打ち立てた、人類発生以前の太古の地球を遡る神話体系の構築、あるいはコズミックホラーである。そしてそれをいかに写実的にかつ現実的に書くのか。そうしたうまく言語化できない出来事や形容しがたいものを表現することに心血を注いだのである。

この論文では同人サークルなどへのたくさんの書簡、あるいは多様な作品や他の作家などの引用などふんだんに取り入れており、労作となっている。

後半はクトゥルフの呼び声、インスマスの影などへの解釈は書簡などから補完され、なるほどと思わせる。共通するのは遺言執行人の手紙であり、その執行人だけが読むことを前提に書かれていることである。この論文の最後に、そうしたラヴクラフトの幻夢境の秘密はいわば彼の作品の遺言執行人たる読者だけは共有することが出来る。語り手と読者がもっとも緊密に通じ合うのは夢想を通してであるのだとする結論に至るまで、一本軸が通った内容となっている。


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