ケアマネジメント・地域包括関連

ケアマネジメントに関する参考文献は19本。内、地域包括と題するものは4本。

以下混乱するので、若干の整理をすると、援助技術としてのケアマネジメントは、表記のままにして、介護保険下で行われている職業としてのケアマネジャーはCMと略すこととする。


ケアマネジメントを論じる中で大きく分類すると、

  1. ケアマネジメントの原理原則(そもそもケアマネジメントとは何か)
  2. CMの役割や業務範囲、仕事のしかた(利用者との援助関係)
  3. 利用者特に高齢者への対象認識に大別される。


 CMの業務とは何かについて、伊藤は、2003年~2005年の介護保険改正時期の制度としての方向性を加味しながら、CMのあり方を検討している。CMの業務は従来から給付管理に多くの時間が取られ、本来の利用者ニーズへのサポートがされていない。または担当者会議が開催されない。他職種との連携したプラン作成がされないといったことが問題視されていた。2005年の改正としてCMの報酬基準を分かりやすく解説し、ケースロードの多さが今回の改正でかなり緩和された。しかし、 CMにより裁量を持たせ主体的に動けるような制度自体の構造を変えないと本来の利用者ニーズに応えることは難しいことが提案されている。

 介護保険とケアマネジメントの関係で井上が論じている。こちらは介護保険施行前のケアも視野に入れており、介護保険前のケアシステムを知る良い資料である。介護を社会化するにあたってニーズを分節化とケアパッケージのマネジメントをするよりも、サービス供給の調整という側面が強調されたことが明らかにされている。現在、ケアのパッケージ化はあまり良い意味で使われていないが、そもそもソーシャルワーカーが自律的に連絡調整して利用者にサービスを提供する意味合いであり、専門性の高いサービスであることが分かる。その他、展望も含めとても読み応えのある内容である。

 梅谷はCMの業務「範囲」を明確にしようとした文献調査である。梅谷はCMは本来的なケアマネジメントではないとする立場を取り、本来ケアマネジメントとは、「最小限」「コーディネイション」「包括的」モデルに大別できる。CMはよくて最小限であると結論づけている。では、最小限以外でのケアマネジメントとは何か。志向するのは、社会の変化や個人の変化。エンパワメントなどの実践と言うことだろうか。現在のCMの業務内容をツリー状に分かりやすく表現しており頭の中の整理には役立つ内容となっている。

 本来的なケアマネジメントとは何かの議論について、太田らの労作がある。太田らは社会福祉士≒ソーシャルワーカーという位置づけから、そもそもソーシャルワークはより包括的で社会の変化を視野に入れたものであるが、実際はそうでないとする批判を行っている。それはケアマネジメント≒CMも同様であると。ケアマネジメントの歴史や本質追究の中で論じている。中でも、「本来ケアマネジメントとはケースワークやグループワーク、さらにコミュニティワークと同じく、利用者の自己実現を可能にするソーシャルワークの支援レパートリーの一つであり、ソーシャルワークの支援過程において展開される実践方法であると考える」(P6)等、示唆の富む内容となっている。

 圓山はケアマネジメントがニーズ中心の側面を強調する立場と効率的な社会資源の活用を強調する立場に分けられていることを明らかにしている。さらにケアマネジメントを深めてエンパワメントとしてのケアマネジメントをすることが利用者の地域生活の基盤がより充実するとする立場で論じてる。太田らが学術的な言説を踏んでいるのに対して、圓山はより実際的な立場で論じており、読みやすい内容となっている。そこでそもそもニードとは何かについて「体感的」「客観的」「法定」と3つに分けて論じており、現在のケアマネジメントは体感的ニード把握が手薄であることを指摘している。

 近いところでは「ケース」マネジメントについて、安達が概説している。日本においてケアマネジメントが高齢者ことに介護保険によって理解されているが、ソーシャルワークで言うところのマネジメントは、むしろ「ケース」と呼ぶべきである。ちなみに、ケアマネジメントの源流は太田らによると「ケアサービス」の提供形態が縦割りあったことにより、連絡調整、仲介機能、情報交換を手法として体系化したことにある。「ケース」マネジメントはより広範に、社会的、精神的、身体的な包括的な連絡調整であり、時に経済的、間接的なアプローチも含まれるとかなり広く論じている。改めてケースマネジメントとは何かを知るとてもよい内容である。


 視点を若干変えて、実際のCMの保有資格や業務内容への調査は馬場が行っている。馬場は400を越えるアンケート調査からCMの性別・保有資格・経験年数・所属・雇用形態・年収等々を詳細に調べており、CMとして働いている人にとっては自分の状況についての客観的な判断が出来る労作である。中でも業務に対して出来ているかとする調査では、保有資格によって判断のしどころが違うとする結果は面白い。いずれにしろ、業務内容としての「説明と同意」の中でも、利用料金やサービスの種類はまずまず出来ているが、契約書やCMの役割を利用者が理解できるように説明できているかについてはあまり進んでいないこと。アセスメントやケアプランも目先のことは良く把握しているが、長期的展望や過去の歴史(生活歴)の掘り起こし、インフォーマルな社会資源の把握が不十分であることなどが実態調査から見えている。

 CMの保有資格によってケアマネジメントに差が出ることについての調査は、斎藤も行っている。異なった教育課程で養成されたCMは、また異なった課題があるはずとする仮説の下で調査している。調査結果、共通するのは、CMは一般に専門性の高い仕事をしていると感じているが、利用者からの理解が得られにくいことも実感しているとのことであった。また自信が無いと思っているのが、面接や利用者の力を引き出す、利用者の価値観の把握などであった。保有資格については、ナースと介護福祉士の間に地域の格差や対象認識に有意の差があることが明らかにされている。

 より詳細に、CMの業務内容や交渉の仕方については、笠原連作している。交渉についてCMは大まかに「定型型」「協同型」「協働型」「危機対応型」「不本意型」「管理型」の交渉戦略を採るとしてそのタイプ別にインタビュー調査をしているユニークな内容である。連作の一つは、ケアプランの作成までのそれぞれのタイプ別の特徴について、もう一つが交渉の実際的な手順の違いについてである。特に交渉の手順の違いは具体的なやりとりを例示しており良く整理された内容である。CMを生業としている人にはとても参考になる内容である。


 高齢者の実態と援助者の取り組みについての文献も散見された。大和田は青森の在宅高齢者の虐待状況を全国と比較している。この論者は東北の福祉系大学で走る人ぞ知る人で、さすがというか論理構成がしっかりとしている。虐待を受けている要介護高齢者の状況を詳らかに調査したうえで、ケアマネジメントは調整だけではなく生活主体者の自己実現や生活の質を高めるためには弁護的(アドボケイト)機能が求められるとする立場をとる。ことに虐待事案下にある高齢者にとってはこうした弁護的立場をとることが重要である。この虐待対応機関として地域包括があるがその取り組みについては山階がある。大阪にある包括で働く社会福祉士を中心に、虐待の取り組みのフローチャートや相談件数、課題について整理している。結論から言って虐待の対応は包括のみで行えるわけではなく、様々な機関の連携をしていくことが大切である。そのうえで、こうした連携に関する教育が十分ではなく、連携に関する養成や実習の必要性が提起されている。

 近いところでは、困難ケースへの取り組みとして、村上和気の研究がある。村上は在宅を中心とした32件の支援困難事例について①利用者と家族の理解、②利用者との相互作用、③CM自身の課題、④所属機関との相互作用、⑤資源との相互作用などに分類し、どのような特徴があるのかを明らかにしている。最後の方で指摘しているのが、潜在化しているニーズを持つ利用者、接近困難な利用者などと呼ばれる人たちへのアウトリーチの必要性が提案されている。和気は困難ケースについて、欧米の多問題家族や措置制度下の時代そして介護保険下のそれぞれの困難の捉え方についてレビューしている。介護保険下においては、利用者の普遍化に伴う量的拡大により社会福祉以外の保健医療専門職がCMとして相談援助を担うようになった。また行政の責務や役割が不明瞭となり、関係機関の責任回避や連絡不十分な状況が恒常的なものとなった事から困難ケースをめぐる問題が深刻化しているとする視点は説得力を持つ。また和気は154人のCMより困難ケースの特性などについて調査している。困難ケースは14%と一定の割合にあり諸問題が重層化していること、利用者の精神的問題、家族問題、独居、サービル拒否などが上位にあることが明らかにされている。結論としてはこれまでと同じようにソーシャルワーク的な発想でケアマネジメントだけではなく、コミュニティオーガナイゼーションやアドボカシー等の援助技術の組み合わせの重要性を訴えている。他、困難でも虐待でもないが、利用者家族とかかわる際にCMが学ぶべき視点や力量形成の提言として小野らの研究がある。このほか、CMが利用者の自立支援や介護予防的なかかわりとしてどのような視点を持って行えばよいかについて、内田が長野県67人のCMに対して調査を行っている。結論として、歩行に対して残存能力の活用を中心に行うことの重要性を提起している。


 全くの別系統として、包括に看護師が実習した場合、看護師が実習で学ぶこととは何かについて磯邊が調査している。学びの視点として、①高齢者の生活や暮らしを知る、②ヘルスプロモーションの視点、③入院から家出の生活の見通しを立てる、④制度的なこと、人権など多様な視点で知ることが考察されていた。また包括の職員のストレスについて、望月が考察している。なんと1150人という大規模な調査で、全国を対象にしたもので、それだけにとても貴重な論文となっている。分析手法や処理については私はさっぱりわからないけれど、統計手法の記述はそれなりに妥当な手順を踏んでいるんじゃないかな。結論として、専門職の配置を多くとることや仕事に対して把握可能感、有意味感が高いとストレスフルな環境下でもやりがいを得ることが示されていた。


 総じて、ケアマネジメントを語る時は、CMの仕事は本来的なケアマネジメントではないという論調である。あるべき論が先行し、CMはソーシャルワークでもなければ相談援助でもないと言われる。それは、社会福祉士はソーシャルワーカーではないとする論点と同様である。CMは確かにケアマネジャーではあるが、高齢者~介護保険の第一線として相談業務についていることには変わりはなく、むしろ率先して援助技術、相談援助のあるべき論を実践できる立ち位置にいると考えることが出来る。よってケアマネジメントだけではなく、様々な技法を学び、活用し実践することが求められていると言える。たぶん、そんな期待を込めての論調なんだろうと解釈したい。

 研究の方向性として、困難ケースへの実践の蓄積が求められそうである。あるべき論などはもはや出尽くした感が強いため、あるべき論と実践のハイブリットな運用なんかが良いと考える。または、笠原のようなCMの交渉戦略やケアプランのパターンなどの分類や分析などもユニークであると考える。


ここに載せているリストは全て無料PDFあり


小野美奈子・松本憲子・草野径子(2002)「介護保険施行後のケアマネジャーの課題」『宮崎県立看護大学研究紀要』2(1) ,30-35

望月宗一郎(2011)『地域包括支援センターの専門職にみられる職業性ストレスの実態」山梨大学看護学会誌 9(2), 33-40

内田陽子(2006)「ケアマネジャーからみた在宅ケア利用者の自立支援・介護予防の条件」56,105-111

磯邊厚子(2010)「地域包括支援センター実習の意義と看護の役割の可能性」『京都市立看護短期大学紀要』35,33-41

村上信・濱野強・藤原由和(2007)「高齢者のケアマネジメントの現状と課題」『新潟医福誌』7(1),43-50

笠原由美(2007)「介護支援専門員のケアマネジメント過程における交渉戦略の移行の研究」北星学園大学大学院社会福祉学研究科北星学園大学大学院論集 10, 23-41

笠原由美(2006)「介護支援専門員のケアマネジメント過程における葛藤解決戦略の分析」北星学園大学大学院社会福祉学研究科北星学園大学大学院論集 9, 49-68

井上信宏(2005)「地域包括ケアシステムの担い手とケアマネジメント・ネットワークの構築」信州大学経済学論集 53, 75-97

齊藤順子(2005)「介護支援専門員の職務意識とその課題」総合政策研究 19, 105-123, 関西学院大学

馬場順子(2002)「介護支援専門員のケアマネジメント業務の現状と課題」『人間福祉研究』5,63-86

伊藤幸子(2005)「介護支援専門員の業務に関する考察」『奈良佐保短期大学紀要』13,37-43

梅谷進康(2005)「介護支援専門員の業務範囲についての一考察」『近畿福祉大学紀要』6(1),35-42

圓山里子(2001)「ケアマネジメントにおけるニード概念についての一考察」『現代福祉研究』1,113-125

太田義弘・小榮住まゆ子(2005)「高齢者に対する生活支援過程考察の意義」『関西福祉科学大学紀要』9,1-18

安達笙子(2006)「ケースマネジメントの援助関係」『鹿児島国際大学福祉社会学部論集』24(4), 17-32

山階克介(2011)「地域包括支援センターの一事例からみる高齢者虐待への取り組みに関する考察」『関西福祉科学大学紀要』15,135-146

大和田猛(2006)「在宅介護支援センターにおけるケアマネジメント実践の課題」『青森保健大雑誌』7,233-240

和気純子(2005)「高齢者ケアマネジメントにおける困難ケース」『人文学報』351,99-121


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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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