デイサービス関連

デイサービスに関して参照した本数は15本。大まかに分類すると

  1. 経営に関すること。
  2. デイサービスの取り組みに関すること
  3. 利用している人の状況、利用者の在宅生活について
  4. その他として実習生の学びと分けた。

 まず、ここ最近の介護保険改正が、予防重視で要認定も軽度化が進んでいる事。あわせてデイサービスにどのような影響を与えているかについてが概説している。基本的に改正によって要介護から要支援に認定される人が増えたことでデイの利益が減収したことを中心に論じられている。または要介護でも重度から軽度へ移行していることが実証されている。その他、リストラの実態も数字をあげている。

 忍が介護保険改正による減収の要因を分析していたが、近いところでデイサービスの現況を広く調査しているのが、高橋である。高橋は、群馬県内の13か所での職員の配置状況、利用人数、利用者の年齢・世帯などを比較調査している。その問題意識は、デイサービス間で格差が存在し、それがサービスの質にあるのではないかという事である。郭は、デイサービスの成立過程や役割、歴史について多めにページを割いており、そもそもデイとは何かについて分かりやすく説明している。また、利用者のサービス満足度と職員の働き甲斐の満足度を調査している。この論点は、利用者と職員の満足の一致点がより良いサービス提供につながるのではないかという事である。他、利用するきっかけや期待すること等がわかりやすく整理されている。利用者が一番満足するポイントが職員の丁寧な態度や言葉使い、あるいは清潔感であるとする結果はある意味デイの本質をついているのではないだろうか。職員サイドでは、主体性や職場環境が整っているなどであり、この研究は一読の価値のある内容である。


 サービスの質を上げることについての取り組みについて柴原らは、利用者の普段の生活の質をどうとらえているか、QOL調査を行い、その後デイ利用での援助計画に基づいて、どのような生活の改善が見られたのかなどを明らかにしている。改善のスコアがなく、事例二つ程度であるが、閉じこもりから生活意欲が向上したことなどが紹介されている。

 遠藤も同様に利用状況をある程度パターン化してどのような理由でデイを利用しているのかを調査している。パターンとして、社会復帰派、自主グループ派、通所生活派、デイホーム派に分けて、事例として論じ一つ一つに評価を施している。デイを利用している人は単に、入浴希望とか家族の介護負担軽減など、利用のきっかけを逃さずに支援につなげることで明らかな効果があることなどを論じている。

 遠藤は別論文ではもっと広い視点であるいは総論的にまとめている。ここでも通所利用継続によって居場所が出来たり、役割が出来た事でうつ状態が改善したことを論じている。関連して、うつ傾向のある高齢者がデイ〈ケア〉を利用することでどう改善したかを一人の事例で継続調査したのが、稲谷である。かなり心理面への分析が詳細でそれなりの知識が要求される内容である。しかし、心理判断、ライフヒストリー、OTPTDrPSW等の各々の判断が詳述されており、本人の状況がよく描かれている。また面接技法に則ってセッションごとの逐語録は臨場感がある。デイケアは一つの生活意欲を引き出す一つのツールであるが、それでも生活や関係機関の連携の中でうまく埋め込まないとその効果は出ない良い例である。


 ではどのようなサービスを利用者が楽しみにしているのかを紹介しているのが木村である。木村はそもそも楽しいとはどういう状態なのかをフロー理論を基に説明している。フロー理論とは自分の能力とこれから行おうとする行為の難易度のバランスがとれている時に楽しみを感じるという理論である。また快適とは何かなど様々な先行研究を参照している。結果として、個人の知識、技能の向上、仲間との交流、生きがいや健康という様々な要因が相互に作用しあって楽しみを享受することが評価によって明らかになっている。また、福祉利用という視点ではなく、交流の場であるという意識で利用者はデイを利用しているという結果は、デイの取り組みのあり方を明確にしている。その一方で職員サイドに対してプログラムのあり方について川島らの調査がある。どのようなプログラムがあるのかを「目的的な活動」と「無目的な活動」に大別し、デイのプログラムの大半が無目的であることなどを批判している。残念ながら薄い調査結果で結論ありきの論述である。

 同様にデイの職員サイドのQOLややりがいについて福本が調査しているがこれもあまり内容の良いものではなかった。ダメな調査の良い見本であった。プログラムでも介護予防に特化したものとして、塩野の研究がある。取り上げるのは福祉の中でもモデルケースとしてたびたび名前の挙がる板橋区のデイの取り組みである。ちなみに板橋区は商売分野でもモデル的な取り組みをしているところである。具体的なプログラムメニューや実施方法、利用者の評価などがひたすら列記されていて、取り組みの仕方ではこんなに充実したメニューが出来るのだと驚嘆するばかりである。これは机上の空論ではなく実践したのだから「すごい」の一言である。中身は脚色なく淡々と描かれており、それがむしろ凄さを感じさせる内容となっている。


 その他、送迎サービスについて小野が調査している。送迎実態の調査はほとんどないといってよく、その意味で貴重な内容である。送迎車両、距離、ルート、時間など詳しく調べており、デイサービスなどで毎日送迎している人ならば、あるあるとうなずくような内容となっている。面白い内容で一読の価値がある。特に、雪が降る地方では


 別系統では、本来在宅生活をしている高齢者の実態としてカテゴライズするべきであるが、デイ利用している在宅高齢者の生活状況について小松が調査している。また長沼は夏場での脱水発生の実態調査をしている。一読すると、何もデイサービスを使うことの意義などに触れておらず、単にデイに来ている高齢者に在宅での脱水についての聞き取り調査であった。小松も内容的にデイに来ている認知症の利用者にどのような生活を望んでいるのかなどのニーズ調査というか、認知症は普段どんなことを思っているのかの聞き取り調査で、デイの役割は希薄である。とはいえ、認知症がやや重い人が普段どんなことを話題にしているのかを知る上ではある程度参考になる。調査結果、「結婚生活」「趣味・仕事」「現在の生活」「ニーズ表出のされ方」と分類されている。内容は本文を参考にかなり詳細に書かれており、読み物としては面白い内容でもある。

 実習関係ではデイサービスで看護学生がどのような学びがあるのかについて水主がまとめている。結果、レクリエーションスキルの必要性やコミュニケーションの理解など学ぶようである。最後の方で、「病棟での臨地実習は一定期間受け持ちの患者と毎日接する機会がある。また、看護技術を用いて看護過程の展開をして内容を深めていくことが出来る。しかし、通所施設における実習の場合は、限られた時間の中だけでしか高齢者と接することができない。そのためこの実習では、教員は学生が知識、技術、態度を習得して統合していくよりも、情意領域を中心にみて観察情報を自分の知識を統合させ内面化していくことを期待していた」P81が本来的な目的であろう。


 大まかにまとめてみたが、サービスの質についての評価やあるべき論は薄い傾向にあり、研究分野としてはあまり厚みがないのが実態である。事例的には稲谷のような事例がもっとあればよいが、文脈としてデイサービスは他の在宅サービスその他の一つそれも重要度の高いサービスと位置付けられていない傾向にある。とはいえ、デイは社交の場であり、引きこもり傾向のある高齢者にとっては有意なサービスであることに違いはない。

この分野の研究の視点としては、デイサービスが在宅生活にとって必要なサービスであることの有意性をインタビュー調査などを通じて積み重ねることが考えられる。


ここに載せているリストは全て無料PDFあり


水主千鶴子(2003)「通所施設における看護学生の学び」『和歌山県立医科大学看護短期大学紀要』6,77-83

小松一子(2009)「通所介護を利用する認知症高齢者のニーズ表出と以前の生活との関連」『花園大学社会福祉学部研究紀要』17,59-74

遠藤慶子・柴原君江(2004)「デイサービス利用者の継続利用と生活意欲」『人間福祉研究』7,115-127

遠藤慶子・佐藤芳子・柴原君江(2003)「デイサービス利用者の自立支援と評価」『人間福祉研究』6,63-80

塩野敬祐(2005)「老いを支える「介護予防のあり方」に関する研究」『淑徳短期大学研究紀要』44,1-27

小野めぐみ・森傑(2008)「高齢者通所介護施設による送迎サービスの実態と移動環境の課題」『都市計画論文集』43(3),403-408

福本安甫(2010)「通所施設職員の負担感とQOLに関する研究」『九州保健福祉大学研究紀要』11,107-112

稲谷ふみ枝・津田彰(2006)「高齢者デイケアにおける包括的心理的援助」『久留米大学心理学研究』5,81-90

川島貴美江・山口美津子(2004)「高齢者のデイサービスセンターにおける介護プログラムに関する一考察」『静岡県立大学短期学部研究紀要』18

木村郷太・小池和幸(2007)『デイサービス利用者の楽しみに関する研究」『仙台大学大学院スポーツ科学研究科修士論文集』8,201-209

柴原君江・佐藤芳子・遠藤慶子・田中陽子(2002)「デイサービス利用者のQOLと援助計画」『人間福祉研究』5,51-62

郭沛俊・捻金恭子(2006)「デイサービスの経営分析について」『香川大学経済論集』79(2),177-202

高橋流里子(1990)「群馬県内におけるディ・サービスセンターの現状と問題」『群大医短紀要』11,109-120

忍正人(2009)「通所介護事業の経営に及ぼした介護保険制度改正の影響」『人間福祉研究』12,141-151

長沼理恵・表志津子・塚崎恵子(2005)「在宅要介護高齢者の夏季における脱水発生に関する実態調査」『金大医保つるま保健学会誌』29(2),105-112


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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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