隠された過去と現在をつなぐナラティブ・アプローチ

上田宜子(2006)「隠された過去と現在をつなぐナラティブ・アプローチ」聖泉論叢 14, 181-189

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006426482

PDFあり

 副題が、高齢者施設における一事例の行動観察から となっている。

 副題の通り、一人の高齢者~特別養護老人ホームに入っている人の問題行動の背景にある歴史を紐解くことからそうした問題行動の解決を図っている。この論文の面白いところは、入所した時点での書類に76年間の過去がまったく記載されていなかったこと。そして面会に来る家族も口をつぐんで知りませんと話すこと。しかし、その女性は奇声や空笑いが絶えず周りの入所者に多大な迷惑をかけている。きっと過去になんかあったんだろうと思うけれど、それが分からない状態であった。

 ナラティブ・アプローチは人は物語を語る存在であること。また人は誰でも過去、現在、未来をつなぐ自分の物語を持っている。その中で出会いや転機、事故、病気それに伴う困難や哀しみなどのエピソードが連なって自分の物語が作られる。そうした過去を語り、もう一つの可能性や人生を見直し、再構成することで生き直すための「促し」である。

 この論文では本人が重度の統合失調症であり、本人が語ったわけではなく、ナラティブなのかやや疑問に思わないでもないが、それでも現在の状況を冷静に観察し、家族が語る本人の過去から現在の行動が理解され、結果として医療に結びつき、問題行動はかなり解消されたという結果に結ばれている。この事例から学べるのはこうしたアプローチを使うことで、周りはその人のことを理解していくのである。

 まさに人はストーリーの中で生きていることを知るのである。

 読みやすく、とても面白い内容である。また、ページ数も少なくサクッと読めるかと思う。

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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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