精神保健福祉領域の「現場」で生成するソーシャルワーカーの援助観

横山登志子(2004)「精神保健福祉領域の「現場」で生成するソーシャルワーカーの援助観」『社会福祉学』 45(2), 24-34


http://ci.nii.ac.jp/naid/110008093508


PDFあり


 副題は、ソーシャルワーカーの自己規定に着目してとなっている。横山先生は、一時期、『ソーシャルワーク感覚』というM-GTAの本を出して割と話題になったことがあるし、精力的に研究をしている人である。また、昨今、M-GTAを使った質的研究が多く出るようになり、社会福祉学の研究の主流ともなっている。その意味で『ソーシャルワーク感覚』は、社会福祉学での調査研究をする上での一つの指針となっている。


 本論ではいわゆるPSWがどのように自己をソーシャルワーカーとして位置づけているのかを明らかにしようとした論文である。PSWは、精神病院のケースワーカーとして働く上で、社会が求める精神病院の役割~社会防衛機能と患者の権利擁護や代弁をどうくみ取り、社会に還元するかのジレンマに陥る。社会防衛機能とは、精神病者は一般社会に野放しにすれば危険であり、隔離して安静してもらおうと言う動きである。一般に、精神病者は隣近所に住んでいては不気味なのである。だから、黙って病院に隔離されてほしいのである。しかし、それでは精神病者の生活権や人間らしい暮らしはどのようにすればいいのか…


 三人のPSWからのインタビュー形式での調査論文だが、非常に臨場感がありまた論理の飛躍もなく淡々と描かれた良い内容である。PSWの立ち位置は、専門家として価値判断をする人というよりも、自らの延長線上にクライエントを見出す、あるいは、ソーシャルワーカーを生きるという、専門家という立場を超えた地平での認識にあることを明らかにしている。それは精神障害者というラベリングによって特別視され、それによって孤立しているひとりの人の当たり前の日常生活を取り戻すという我々の職業的使命を果たす上で必要な認識でもあると。


 今後の課題でも述べられていたが、なぜこのような援助スタンスを取るに至ったのかというプロセス研究が必要だと思う。私も非常に興味がある。とても示唆に富む内容であるが、残念ながら定額制の論文である。



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