スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

社会福祉施設二三年目退職職員におけるバーンアウト深刻化のメカニズム

深谷美枝(2008)「社会福祉施設二三年目退職職員におけるバーンアウト深刻化のメカニズム」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』128,1-18

http://ci.nii.ac.jp/naid/40016002435

PDFなし

 援助技術系では、結構有名な先生による継続研究。詳しくは、http://ci.nii.ac.jp/author?q=%E6%B7%B1%E8%B0%B7+%E7%BE%8E%E6%9E%9D を参照すれば良いが、ほとんどの論文がPDFになっていないのが残念なところ。

 副題は、ーコア・カテゴリー『ケアを巡る実存的葛藤』に着目してーとなっている。新任職員が介護の現場で仕事が続かないと思って、止めようと思う原因の一つに、施設で行われるケアが反倫理的なことが続くなど、悪いケアが横行する事に対する怒りや絶望感がある。悪いケアが横行し、それでも組織の中で働き続ける内に、自己の喪失感や否定的な自己との出会いを通じて罪責感を抱くプロセスに至ること、それがケアを巡る実存的葛藤とされる。

 この論文は継続的研究の後半に位置し、M-GTAでカテゴライズしてきたものを更に精査している内容となっている。6人の離職や燃え尽きで退職した6人の女性を対象にインタビュー調査を行い、GTでカテゴライズしている。カテゴリーやサブカテゴリーには辞めるに値する理由が理路整然と並べられ、ケアを巡る実存的葛藤のコードも良く探索されており、さらにモデルもまた分かりやすい。申し分のない内容となっている。そして、そのコードに至るまでの理由もしっかりと述べられ、まるで、M-GTAのお手本のような論文である。

 簡単に結果だけを列挙すれば、

  1. ケアを巡る実存的葛藤~罪責感に悩まされる状態が続くことで深い「霊的痛み」が心身をボロボロにする。そして、思考を停止し、流されることで職員が専門職としての基準を棄てて、雇用組織への帰属を強く求められることが迫られると、専門的自己にとって破壊的な事態に陥り、そこで抵抗するか、状況服従的になるかによって違ってくる。
  2. バーンアウトや退職のきっかけになるのは、心の支えになっていた先輩の異動で支え手を失うことも大きな要因の一つになる。
  3. 悪い組織体制とケアの関係では、どんなに倫理観の強い職員でも、組織のやり方によって変容することからは自由ではない。しかし、その組織の適応から我に返ったときに、『ケアを巡る実存的葛藤』に立ち戻る事による苦痛がある。
  4. しかし、こうした施設にやり方が苦痛で辞めるのは、場当たり的であり、キャリア・デザインが十分にできていないうちに辞める。それは緊急避難的でもあるといえる。

 最後に、述べているように、バーンアウトも『ケアを巡る実存的葛藤』も仕事や組織の中で起きていることであるが、個人がもっと努力して心理的バランスを取りつつ、解決しなければならない問題として提示され過ぎていることを所感として述べている。その意味で、こうした問題は、組織あるいは社会構造の中にあることをささやかではあるが提示した良い論文である。

 悪いケアということは何となく具体的に思い浮かぶ。暴力、暴言、嘲笑など人としての尊厳をないがしろにあるいは無視するような感情的なケアである。しかし、良いケアとは何か。人の尊厳を最大限に尊ぶケアとは何か。多分、自分が喜ぶようなことを人にしてあげなさいなんて言うんだろうけど、人の数だけあるだろうから。

 とはいえ、それでも良いケアをしようと志す中にそれはあるんだろうなぁと思う。それが組織として共通意識があるならば、こうした実存的葛藤は良い意味で発揮されるんだろうと思う。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kuma

Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

自分のサイトもあります。
kumaの学習ノート

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。