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介護保険制度とモラルハザード

吉田初恵(2008)「介護保険制度とモラルハザード」『関西福祉科学大学紀要』11, 95-105

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006594487

PDFあり

 この論文は介護保険が陥りやすいモラルハザード~保険用語で言う意味での~について詳しく述べられた非常に勉強になった論文である。

 保険用語で言うモラルハザードとは、保険というシステムに内在する機能的な問題であり、若干引用が長くなるが、

 例えば、自動車保険に加入すると保険に加入していない時よりも、保険に加入した安心感から事故に対する注意が幾分かでも希薄になることや、社会保障制度があることで病気や失業などの日常生活上のリスクを回避する意識が薄れることをモラルハザードという。これは、モラルがあるなしの問題ではなく、モラルがある人も、モラルがない人も、誰しもこの様な行動を取ってしまうことであり、機会主義的・合理的行動といえる。

 この様な視点から、意識の低下などから、結局は保険会社の保険金支払いなどの費用が増えるような行動という。保険機能には逆選択(ローリスクな人が保険加入をしない、脱落すること)やモラルハザードが常に内在していると言って良いと言われる。公的保険は更に、フリーライダーというモラルハザードがある。では、介護「保険」のシステムに内在するモラルハザードとは何か。大きく4つに分類されており、

  1. 被保険者(利用者、自律している被保険者)、介護者
  2. 介護サービス供給者(営利事業者)
  3. 介護サービス供給者(社会福祉法人の非営利事業者)
  4. 保険者(自治体)などについてそれぞれを考察している。

 その上で、2005年の改正が色々な特に1~3のモラルハザードを防止する強化策として行われたことを概説している。いちいち納得の内容であり、すごく納得させられた。その他、モラルハザード対策における介護保険が取りうる対策と無理な対策も妥当性がある。最後にまとめられている、一文はこの論文を良く表現している。

 2005年改正内容には、新予防給付の創設、ケアマネジメント業務の公正中立化、情報公開をはじめとして、介護保険制度に内在するモラルハザードがもたらす効率性の損失を減らす内容が盛り込まれている。しかし、介護保険制度のモラルハザードを抑制しようとすると、社会保障である介護保険制度に新たな公平性の問題が発生することが、今改正で現実のものになった。[…中略…]効率性と公平性というトレードオフの達成課題をいかに達成するかが、今後の介護保険制度の課題である。

 非常に勉強になった論文である。興味がある方は是非どうぞ。


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救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

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