社会福祉の教育と研究における社会学:ある社会学教員の経験から

社会福祉の教育と研究における社会学:ある社会学教員の経験から

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『社会福祉学の<科学>性』で,日本社会福祉学会の学会賞を受賞した知る人ぞ知る気鋭の学者. 今回は隣接する社会学との対比で,社会福祉学とは何か,そして社会学はどのように社会福祉学に影響を及ぼしたのかを論じている.
といっても,非常にざっくばらんに展開していて,おしゃべりをしているような書き方で読んでいてすんなりと入ってくるが,内容は優しいわけでは無い.最後の方に,社会学は社会福祉学にかなりの影響を与えたが,社会福祉学が社会学にはあまり影響を与えてないことがさらっと書かれているからである.だからこそ,相互交流とか学術的な議論の必要性が提示されているが,実際の話,どうなんでしょうね.
社会学は既存の常識や倫理,社会の有り様を疑うことから出発するが,社会福祉学には倫理などの制限が加わり,ブラックボックスに触れないことがあるなどの違いがある.作法として,社会学は世間からの逸脱をも恐れずに,むしろ逸脱することを目的にするが,社会福祉学は,実践の理論としてどう適用するべきかに注目するなどなるほどと思う. 社会学を社会福祉学が取り入れる場合は,新しい視点で現象をよりよくするために取り入れることなど,確認もこめてなるほどと思う.
読みやすい内容だが,これも養成校の教員向けの話かなぁ.

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ソーシャルワークとケアワークの分離に至る過程

ソーシャルワークとケアワークの分離に至る過程

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社会福祉士と介護福祉士の成立過程を詳らかに調べて論じたもの.社会福祉士の必要性については1970年代からすでに論じられていたが,色々あって1987年まで待たないといけなかったこと.あるいは,養成校とか政府,官僚の福祉の捉え方の違いなど,それぞれの時代ごとの審議録などを調べている.
現場サイドとしては,どうでも良いことであるが,ソーシャルワークは社会福祉士かという議論はしっかりとしないといけないような気がする.ただ,文中にもあったが,社会福祉士は当初から相談員,コーディネートやマネジメントを想定されていたこと.また多様な社会ニーズに対応できるだけの広い知識を持った多能工化を目指していたことが分かる.
とするならば,社会福祉士の後にケアマネや障害者福祉では,相談支援員などが出来,相談からマネジメントまで広く行えている今,社会福祉士の存在意義はどこにあるのかという問いは無かった.
ケアマネにしろ相談支援員にしろ,とりあえず量的な確保が優先されていたことを考えると既存の社会福祉士を量的に拡大できなかったのかどうか.介護福祉士の合格率との比較で考えれば,ホントに必要な資格だったのか疑問が残るところである.
とはいえ,すでに20万以上いる社会福祉士の活用法はどうなのか.タダでさえ,受験者数の減少が目立ちはじめているなから,本気に考えてほしいと思う. 内容としては,養成校とかで働いている人にはタメになる内容だが,現場サイドで読むならば考察と結語を読めばだいたいの事が分かる内容となっている.

「やっとホントの顔を見せてくれたね !」 : 日本人セックスワーカーに見る肉体・感情・官能をめぐる労働について

「やっとホントの顔を見せてくれたね !」 : 日本人セックスワーカーに見る肉体・感情・官能をめぐる労働について

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いわゆるセックスワーカーへのインタビューを通じて,お客さんに見せる仕事としての貌について論じている.これまでこうした労働のことを感情労働といっていたが,実際はさらに官能労働とも言うべき,深い演技が行われていること.例えば,お客さんに初めていかされたとかは全部フリであり,とりあえずお客さんに喜んでもらうことで無駄な時間を使わないように心がけているとのこと.また,お客さんにほんとうにいかされてしまった場合は,逆にすごくプライドを傷つけられて,その事をひた隠すとのこと.
ところで,題名にある『やっとホントの顔を見せてくれたね』は,お客さんにそう話された言葉が引用されている.しかし,そうしたホントの顔を見せたように振る舞っただけであり,客の前では決して本音は見せない.ただ,この『やっとホントの顔を見せてくれたね』は,論者にそうしたことをネタバレのように話してくれたことの意味もありダブルミーニングがある.
ただ,この論文でのインタビューで答えたことも,その通りに解釈して良いのか.それは分からないという意味で,トリプルミーニングかも知れない.
5人の売春婦から聞き取った内容で,非常に読みやすい.

妲己と狐

妲己と狐

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いわゆる九尾の狐のイメージの変遷について述べている.もともと九尾の狐は神獣というか珍獣として山海経にて登場している.山海経では,超自然的なモノでは無く,実在の動物であり,食べることで薬効があるようなものであった.それから時代が降りてくるに従って,瑞獣となり,縁起の良いものとなり,白い狐は良いが金色の狐はあまり良くないものとなっていく.
その後,狐の妖怪が時の王をたぶらかすものとなっていくこと,それが転じて狐媚(こび)を売ることに転じていくことなどをたくさんの中国の古書を下に紹介している.また古書の文章を和訳しており,親切設計となっている. そこから殷の悪王として名高い紂王をたぶらかした妲己が九尾の狐であったことを紐解いている.(当たり前のことであるが,そもそも紂王と妲己は史実であるが,九尾の狐であったことは後付である)
とにかく非常にじっくりとイメージの変遷を古書を下に明らかにしており,すごく面白い内容である.そして,そうした様々なイメージが付与された形で,鳥羽天皇をたぶらかした玉藻が実は妲己であった九尾の狐であったということに結びつくことなど,伝播についても言及している.
ちょっとした民俗学ミステリーを読むような感覚で非常に面白かった.

障害者の社会的孤立とその対応に関する文献検討

障害者の社会的孤立とその対応に関する文献検討

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高齢者の孤立問題は多く文献などで取り上げられているが,実はそれと同じように障害者の孤立は深刻であることを取り上げている.
特に在宅で暮らすようになった障害者にとって,療育する家族もまた孤立傾向にある.これは古くから問題提起されているが,社会的排除の文脈ではあまり分析もされていない様子である.この論文では,孤立のパターンとして,1.単身世帯,2.ひとり親と子ども世帯,3.家族同居だが世帯全体に弱さがある世帯と分類し,その類型とリスクの形態について分かり易く解説している.
また,そうしたリスク世帯への対応にも,民生委員,地域包括支援センター,NPO,社会福祉法人によって違うことや,限界と連携の必要性について詳しく論じている.
特に問題なのが,3の世帯全体に弱さがある世帯への介入であり,家族と同居していると認定されているが故に,そこに扶養者がいると見なされ,福祉的なサポートの介入が消極的になっていること.また,介入の仕方も難しいことなどを論じている.
ページ数は少なく,さらっと書かれてはいるが,考えさせられる内容となっている.

地域を基盤としたソーシャルワークにおける予防活動枠組みの構築 : 対人支援理論の活用を含めて

地域を基盤としたソーシャルワークにおける予防活動枠組みの構築 : 対人支援理論の活用を含めて
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内容

物凄くシンプルに対人支援理論,エコロジカル,心理社会的,問題解決,役割理論,コミュニケーション理論,課題中心,ナラティブ,機能的,行動療法的,危機介入のそれぞれのアプローチが地域福祉の予防的視点でどのように機能するかを分類考察したもの.
地域福祉では,第一次予防から第三次予防までの過程があり,早期発見から実際の介入が第二次であり,その結果,第三次でモニタリングや問題点が洗い出され,予防的視点の形成や機能が第一次と捉えている.つまり,第一次は主に基盤,第二次は運用,第三次は評価となる.この枠組みから文献調査により,高齢者の孤立対策,退院計画を抽出して当てはめて解説している.
それぞれの対人支援理論には,介入に仕方やシステムによって,第一次にそぐわないもの,第三次には適用しにくいものがある.それを便宜使い分けながら行うには,その得手不得手をしっかり把握していくことが必要である.
その意味で,この論文は非常に整理され,一つの視点を見事に提示している.ただ,支援理論やある程度の地域福祉のメソッドを知っていることが前提にあり,読む人にとってはあまり親切では無い内容となっている.

2017年7月論文リスト

CiNii 論文 - 介護事故の現状と問題点 : 高齢者介護施設を中心に http://ci.nii.ac.jp/naid/110008454282

CiNii 論文 - 市民社会と地域福祉 : 社会福祉と参加の制度史再考 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006219907

CiNii 論文 - 地方で暮らす在宅高齢者の日常生活への想い T市包括連携事業報告書 在宅高齢者へのインタビュー調査の結果から http://ci.nii.ac.jp/naid/120006243481

CiNii 論文 - T市で暮らす在宅高齢者の生活ニーズ~語りの分析を通して~ http://ci.nii.ac.jp/naid/120006243482

CiNii 論文 - 介護職員へのコンサルテーション http://ci.nii.ac.jp/naid/120006246586

CiNii 論文 - 虚構の社会-メイクビリーヴ説の社会哲学への応用- http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248929

CiNii 論文 - ドウシテダレモタスケラレナカッタノカ? http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248943

CiNii 論文 - 地域支援事業における家族介護者支援 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006305244

CiNii 論文 - 障害者政策における当事者参加の比較研究 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006027750

CiNii 論文 - 福祉臨床論とソーシャルワーク教育をめぐる諸問題:プロセス構造における課題整理について http://ci.nii.ac.jp/naid/120006242310

CiNii 論文 - 当事者の意思決定支援と社会的責務 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006242317

CiNii 論文 - 精神障害者の家族政策に関する一考察:保護者制度の変遷を手がかりに http://ci.nii.ac.jp/naid/120006242318

CiNii 論文 - 戦後ハンセン病政策と家族の諸問題:家族訴訟を中心に http://ci.nii.ac.jp/naid/120006242320

CiNii 論文 - 地域連携コーディネータによる地域資源の活用と再生産 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248934

CiNii 論文 - 医療・介護費用の増加と対応策 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248938

CiNii 論文 - 回想法・ライフレビューの倫理を巡って http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248950

CiNii 論文 - ソーシャルワークとケアワークの分離に至る過程-「社会福祉士法試案」から「社会福祉士及び介護福祉士法」成立までの議論分析- http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248951

CiNii 論文 - 地域福祉の実効性を高める「地域社会」の捉え方-『自治型地域福祉の理論』の発展的展開に向けて- http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248953

CiNii 論文 - アルコール依存症に対する連携体制の整理 3つのモデルの比較 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248956

CiNii 論文 - <ケア関係>の形成についての相互行為分析-「重度身体障害者」対象の生活介護事業所でのビデオ映像データに基づいて- http://ci.nii.ac.jp/naid/120006248963

CiNii 論文 - 生活保護における加算の意義の検討と運用についての考察 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006305544

CiNii 論文 - 地方自治体に着目した生活保護制度の分析 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006307351

CiNii 論文 - 養護老人ホームにおけるレジデンシャル・ソーシャルワークの目的と機能 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006307358

CiNii 論文 - 「日本型福祉社会」論の萌芽期における福祉国家政策理論の特徴 http://ci.nii.ac.jp/naid/120006312050

CiNii 論文 - 就労支援の現状と課題 : 生活困窮者等の支援の観点から http://ci.nii.ac.jp/naid/120006306396

CiNii 論文 - 生活困窮者自立支援制度に関する一考察 : 地域福祉視点からの支援システム http://ci.nii.ac.jp/naid/120006306398

CiNii 論文 - 藤原清衡論(上) http://ci.nii.ac.jp/naid/120001124271

CiNii 論文 - 藤原清衡論(下) http://ci.nii.ac.jp/naid/120001119744

CiNii 論文 - 明治初年におけるからくり師の活動 : 明治五-六年大阪滞在期における前原功山を素材に http://ci.nii.ac.jp/naid/110007125186

CiNii 論文 - 私たちは自然と共生できるのか? : 『もののけ姫』の哲学的考察 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007151074

CiNii 論文 - 身体という表象 : アクション・ヒロインの誕生と進化 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000041325

プロフィール

kuma

Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

自分のサイトもあります。
kumaの学習ノート

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