日本における格差・貧困に関する議論の動向

田中秀和(2011)「日本における格差・貧困に関する議論の動向」『新潟医療福祉学会誌』10(2),54−58

http://ci.nii.ac.jp/naid/120003042252

PDFあり

 副題は、格差社会論から貧困論へ となっている。

 格差社会といわれて久しいがその後この種の研究はより貧困そのものへのアプローチへと変化している。そうした視点で文献のレビューをしている。とても分かりやすくまとめられていている。現在は子どもの貧困の連鎖がもっとも焦点化されて研究なされているようである。

 ふと思うのは、格差の度合いの分析はともすれば富裕層への批判~社会批判が色濃く出るが、貧困といえば社会批判というよりも救済的な色が強くなり、ともすれば貧困を生み出す社会構造への分析と批判が無くなるのではないかと思った。でも、目の前の困っている人をどうするかそれはとても大切なことでもある。

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新新宗教における文化的ナショナリズムの諸相

塚田穂高(2009)「新新宗教における文化的ナショナリズムの諸相」『宗教と社会』15,67-90

http://ci.nii.ac.jp/naid/110007524843

PDFあり

 副題は、真光と幸福の科学における日本・日本人観の論理と変遷 となっている。

 竹内文書というとっても怪しい文書があって、オカルト雑誌などではよく取り上げられるもの。他にも九鬼文書とかああるけれど、CiNiiで検索すると竹内文書だけが唯一ヒットしてPDFで落とせたのがこの論文であった。

 この論文は副題にもあるように真光と幸福の科学の思想がいかなるモノかを比較して整理している。そのうち竹内文書を取り込んでいるのが真光であった。

 選民思想、バブル期の傲り、反世俗姓がぷんぷんするけれど、そうして旧宗教も成長してきたんだろうと思う。

 真光にしろ幸福の科学にしても、入信していないとよく分からないけれど、この論文では、機関誌や著書などをつぶさに分析して違いがしっかりと理解できる内容である。

 興味のある方はどうぞ。

秦、徐福伝承の研究(中編・後編)

伊東宏(1998)「秦、徐福伝承の研究(中編・後編)」『人間と環境 : 人間環境学研究所研究報告』1, 33-45,2, 11-26岡崎学園国際短期大学人間環境学研究所

http://ci.nii.ac.jp/naid/110004597679

http://ci.nii.ac.jp/naid/110004597685

 共にPDFあり

 徐福とは紀元前3世紀ころ、日本で言うところの縄文時代から弥生時代に移り変わる時期、中国の秦の始皇帝が不老不死の薬を徐福に取りに行かせるため中国から朝鮮へそして日本に渡ってきてそのまま定住した人。その時、1000人の男女の子どもと100人くらいの職能を連れてきて日本に様々な文化を広めたとされる。この論文では、その日本においてどのような影響があったのか。地名や謂われや祭りなどの慣習をその徐福伝承に重ね合わせて論じている。

 いや~すごいね。徐福伝説は諸星大二郎も書いているけれど、その諸星大二郎の有名なキャラクター、妖怪ハンターこと稗田礼二郎もびっくりの推理。地名や氏名などに徐福の痕跡を全て当てはめていく様は、かなりスリリング。また浦島太郎や七夕までも徐福伝承に当てはめていく。

 これは絶対にクトゥルフのシナリオにでも出来そうなネタ。

 もちろんこの先生は大まじめに論じているし、察するにかなり高齢だと思う。って、調べたら中学や高校の教諭を28年、その後短大の教授などを7年以上って事でやっぱりおじいちゃん先生だった。

 残念なことに前編はPDF化されていない。その辺はwikiで徐福でカバーしてください。

 古代中国とか日本のルーツとか現存する氏名や地名の由来なんかに興味がある人は是非オススメします。といっても、鵜呑みにして良いかどうかは自己責任でお願いします。

神戸小学生殺害事件報道における識者コメントの内容分析

小城英子(1999)「 神戸小学生殺害事件報道における識者コメントの内容分析」『マス・コミュニケーション研究』54, 127-140

http://ci.nii.ac.jp/naid/110002954768

PDFあり


 副題は、容疑者逮捕前の犯人像に関するコメントの質的分析 となっている。

 かの有名な酒鬼薔薇聖斗事件である。この事件前にいわゆるその手のプロたちがいかに間違った見解を述べ、そのことでイメージに類似していた人たちがいわれのない疑いを周りから受けていたかを分析している。

 この事件に限らず、重大事件が起きればどこからとも無く元検事とか精神科医とかが出てきてプロファイリングをする。それを神妙にアナウンサーなり受け手が聞いてそれらしい教訓を垂れ流す。プロファイリングが当たっていようがいないが、とりあえず報道されることを事実として視聴者は受け取るわけだが、では、実際はどうなのだろうか。

 逮捕されるとあっという間に間違った情報も何もかも忘れて終わりになる。しかし、その間、プロファイリングに近いような人たちはまさに言われ無き被害者になる。オタク、失業者、低学歴者…常に世の中の弱者が批判の眼差しを受ける。またはホモ、レズ、フリークなどのマイノリティが虐げられる。

 この事件でいかにいわゆるコメンテーターがどのような情報を流し、そして犯人像を形成したのか。あるいはどのような根拠で犯人像を描いたのかを調べたモノ。結果として、内面性や犯行の動機などは逮捕後の精神分析とあまりずれないで描かれたが、外見や状況に関してはかなり間違った情報を流していたし、その根拠もしっかりと示されずにイメージ先行、主観、偏見に基づいていることが伺える内容であったことを論じていた。

 いたずらに不安を煽られずに、メディアとはつきあう必要がある。それを再確認させてくれる内容である。

「フリーター」/「ニート」を生きる

仁井田典子(2010)「「フリーター」/「ニート」を生きる」『社会学論考』31, 83-112,首都大学東京・都立大学社会学研究会

http://ci.nii.ac.jp/naid/40017445046

PDFあり

 副題は、若年者就業支援施設Zに通うAさんを事例として となっている。

 Aさんはアルバイトはするけれど、ある一定の期間働いては止めて家でゴロゴロとニートになる。ちょうど、フリーターとニートの境界を歩いているような人。いまでこそフリーターってのは社会問題みたいに扱われているけれど、もともと夢や自由を求めて自らの意志でアルバイト生活をする若者って意味で使われた。むしろ気ままに働いて自分のやりたいことや自己実現を労働に縛られずに、必要なときだけ働いてお金を得るってスタイルで当時はとっても輝いていた。

 これは新自由主義的な発想で、雇用の流動化や安い賃金で働くことで企業体質を強化させようとする政府や資本家の策略だったわけで…それが構造改革とかってきれい事に聞こえるけれど、どうなんでしょうね。むしろ、使用者とか金融資本家こそ構造改革されるべきって思うのは賃金労働者のひがみだろうか…

 それはそれとして、このAさん、いろんな意味でイタイ人です。それは長々と本文に書かれている論者とのインタビューを読んでみれば分かるけれど、とにかく真っ当に働いている人からすれば、なに甘ったれているんだよって思う。しかし、それでも、あえていう。これがまた現実なのだと。論者最後の方で、Aさんを責めるわけでもなく、Aさんの「生きにくさ」は、雇用の不安定化が拡大していく現代社会において、その問題を社会的な問題ではなく、個人へと帰責させていく日本社会のあり方から生じたモノであるといえるのではないだろうかと締めくくる。

 確かにAさんのような生きにくさというか後ろ向きでどこかニヒルでいわゆるダメダメな感じの若者はいつの時代にもいて決して成功とか出来ないだろうなと思う。けれども、だからといって、だからお前はダメなんだと言って思考を停止させてもあまり意味はない。問題は、彼を通じて社会を見た場合、それはどんな社会なのか。どこに問題があるのか…それは、あなたではなく、もしかもしたら今度生まれてきた子供がそうなるかもしれない。その時あなたはどうするだろうか。

 面白い内容である。

与那国島海底遺跡の調査研究(前編)

木村政昭(2003)「与那国島海底遺跡の調査研究(前編)」『日本造船学会誌』872, 208-213

http://ci.nii.ac.jp/naid/110003879987

PDFあり

 副題は、水中テレビロボを導入して となっている。

 ちなみに後編もあるけれど、ロボットのことの説明で、実質遺跡について言及しているのはこれである。

 与那国島の海底遺跡は、失われたムー大陸の都市だとかトンデモ学説とかある一方で、これは自然にできた海底形状だとか夢もかけらもないものまでまだまだ議論の余地のあるような代物らしい。wikiで調べたら、この先生だけが遺跡説を唱えているらしい。

 古代遺跡とか、日本にもあったピラミッドとかそういうオカルトみたいなことが大好きな私としてはとても面白い内容だった。まぁ、先生にしてみれば、これはオカルトじゃないと怒りそうだけど。

 この海底遺跡にはどんなモノがあるのか。そして、遺跡として立証されるためにはどんな条件があり、この遺跡がそれを十分に満たしているのかについて論じている。また自然に出来たモノではないことにも言及している。沖縄の方だから独自の琉球文化があるように、古来中国や韓国から渡ってきた人の王国とか国家があったかもしれないなと。

 いずれにしろ分かりやすい内容でこれだけ読めば、遺跡って思うけれど、一応公平性を保つために、wikiの自然説の見解も目配せしておくことにした。

 wikiの与那国島海底遺跡について 

プロフィール

kuma

Author:kuma
救護施設→知的障害児施設→通所介護施設(高齢者)と15年以上。これからも思考と体力で、働いていきます。

自分のサイトもあります。
kumaの学習ノート

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